昔馴染みの話。
ボーイスカウトのキャンプで引率していると、ある河原で子供たちが騒ぎ出した。
「一体どうした?」
騒いでいる子供をドヤしつけ問い質す。
「ジャミラが出た!ジャミラが出た!」
子らは口々にそう叫んでいた。
川向こうの繁みから怪しい影がヌッと現れて、こちらに大勢いるのを見るや否や、引き返していったのだと。
その姿はまるで、ウルトラマンに出てくる怪獣ジャミラみたいだった。
目撃した子供たちは皆口を揃えてそう言ったのだそうだ。
「今の子供らでもジャミラとか知っているんだなって、何とも興味深く思ったよ」
・・・印象に残るポイントがちっとズレてるんじゃないか?
私が些かズッ転けながら問えば、ヤツは頭を掻いて答えた。
「いや実は俺もガキの頃、あそこの原で見てるんだわ、ジャミラっぽいの。だから聞いても別に驚かなかったんだけど。・・・確かに、よくよく考えたら、ジャミラの方がおかしいか・・・」
お前さん、そうやって幾つもの“実は怪事”をやり過ごしてるんじゃないか?
そう問い掛ける私に、ただ「うーん」と唸るのみの彼だった。