俺は今、別の人生を生きている

カテゴリー「不思議体験」

10歳の時に交通事故に遭って意識不明に陥った。
それより前の記憶はハッキリ覚えてる。

両親の顔と名前、兄弟の顔と名前、勿論自分の顔と名前。
しかし幼かったからか住所だけは思い出せない。
住んでいた街並みとか、それまでに付き合ってた人々の顔や、昭和という元号も覚えてる。

11歳の時にふと目が覚めると、そこは病院のベッドの上だった。
目が覚めた後、自分の家族が呼ばれた。

意識が戻ったことを家族が涙を流して喜んでいた。
その家族の顔と名前はもちろん判ってる。

立ち上がれるようになった後、鏡で自分の顔を見た。
その自分の顔にも見覚えがあったし、自分の名前にも勿論聞き覚えがあった。

しかし、事故で意識を失う前の顔と名前。
意識を取り戻した後の顔と名前がそれぞれすべて違ってた。

両方とも覚えているのにすべてが違うんだ。
今は意識を取り戻した後の世界。

つまり11歳以降の世界を生きている。
でも今の世界の10歳以前の記憶がない。
10歳以前の記憶は別の世界の記憶なんだ。

不思議なのは今の世界の家族や自分に違和感がなかった事。

正直、どうなっているのかよく判らない。
パラレルワールドに迷い込んでしまったのかもしれない。

10歳で事故にあったとき、鼻の奥がツーンと痛くなって、身体が動かなくなり、無性にその場にいない母親に謝っていた。

沢山の人が自分を取り巻き、気の毒そうな顔を覗かせていた。

どうしてこんな事になったんだろうと考えてた。
悲しみと恥ずかしさが込み上げてきたけど、どうすることもできずに、静かに道路に横たわっていた。

救急車が呼ばれ救急隊員の方が必死に話しかけてくれた。
そして意識を失った。

次に気が付いたとき、両親と兄弟が自分のベッドを取り囲んでいた。
天井の照明が滲みながら、どんどん流れていった。

「心配するな。必ず助かるから、お父さんとお母さんはすぐ側にいるから・・・。」と父が話しかけてくれた。

母は涙声で私の名前を呼び、「大丈夫だよ。怖くないからね」と声をかけてくれた。
私はそんな両親に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
謝りたかったけど声が出なかった。

そして意識を失った。

気が付いたときは全然別の人生になっていた。
以前の両親や兄弟に会いたいと思ったこともあったけど、今の両親や兄弟も自分の家族なのだから、混乱が酷かった。

もう会えないのかな・・・と思うと悲しみで胸が張り裂けそうになった。
でもどうすることもできなかった。

そのまま今を生きている。

ブログランキング参加中!

鵺速では、以下のブログランキングに参加しています。

当サイトを気に入って頂けたり、体験談を読んでビビった時にポチってもらえるとサイト更新の励みになります!