2時になると異形のものが出るって、聞いたことないか?
俺は昔、爺さんに聞かされたことがある。
「2時はな、昔の言葉で言うと丑三つ時なんだが、その時間まで起きてたらあかんぞ。この世のものとは到底思えないものに会うことになるからな。」
こんな風に言い聞かされて育ったわけだが、正直なところ「ただ孫を怖がらせたいだけだろ」って思ってたんだ。(まあ、ビビリな性格になっちゃいましたけどね。)
そんな俺なんだが、今は父方の実家、つまりさっきの爺さんも住んでた家で暮らしてる。
実はこの家系、元々山伏の家系で、今もその名残なのか、一軒家の我が家の裏山には神社が祀られてるんだ。
それで、今になっても神事が細々と続けられてるんだが、毎年小正月になると子供たちが神社で一晩過ごす行事を行うんだな。
でも今のご時世、子供なんてこんな超高齢社会の限界集落で、しかも行事なんかに参加する子供、存在すると思うか?答えは否。
そこで、しょうがないから俺が神社で一晩過ごすっていう流れになったんだわ。
色々あって。
でもさぁ、俺もう今年で22になるが、怖いものは怖いじゃん?爺さんのせいだが。
だから幼馴染の男道連れにして決行した。
飯と風呂を済ませて神社へ向かう。
俺氏の天津祝詞から始まり、まあ行事を済ませる。
それで後はお神酒をチビチビ幼馴染といただきながら、朝を待つだけだったんだが、深夜1時を過ぎた頃だっただろうか?日本酒が回ってほろ酔い状態だった俺は、幼馴染をビビらそうとして、「なあ、2時になると異形のものが出るって話。聞いたことあるか?」っていう爺さん直伝の話題を繰り出した。
それが間違いだったのかもしれない。
今思えば、そんな話題振るんじゃなかったと思う。
幼馴染は「あぁ知ってるぜ?てか、この辺の集落に住んでりゃ常識じゃね?」って。
更に幼馴染の話は続き、「この辺なぁ。昔は修行場だったらしいんだけど、修行するやつなんかもういないだろ?だから、段々と物の怪達が蔓延り始めてるんだぜ。てか、お前の家、山伏の末裔だろ。聞いたことないのか?」
そこでちょうど良く俺の腕時計が2時の時報を鳴らす。
キキキキキキキキキキキキキキキキキキィキィキォキィキィキィキィキキキキキキキキキキキキキキキキキキィキィキ
キィキィキィキィキキキキキキキキキキキキキキキキキキィキィキォキィキィキィキィキキキキキキキキキキキキキキキキキキィキィキォキィキィキィキィ??!
神社の境内からそんな奇声が聞こえてくる。
幼馴染「ほら、始まったぞ。」
俺はビビった。
まさかこんなことになるとは。
外?もちろん確認しない。
だって怖いじゃん。
そうして俺と幼馴染は、朝を迎えて無事に帰宅しましたとさ。