介護業界にいるんだが、まだ現場職だった頃の話。
その頃俺はショートステイって言って、例えば家族が外出したりとか介護負担の軽減とかのために、利用者を1泊とか1週間とか期限付きで預かるユニットの責任者をしてた。
ある夜、夜勤をしてたんだけど、その日はそんなに忙しくなくて居眠りぶっこいたりテレビ見たりケータイで毒蛇の事調べたり、とにかく余裕があったんだよね。
まあそれにしても定時のオムツ交換とか巡視とかはしっかりやってた。
確か2時の巡視が終わってまたテレビ見てた時に、角部屋の辺りから「ズズッ、ズズッ」って音がしたのよ。
その音って我々の職業にはかなり耳馴染みのある音なんだけど、老人が押してるシルバーカーを半ば無理やり方向転換する時によく鳴る音だった。
「あれ?誰かトイレに起きたかな?」と思って声かけに向かった段階でふっと気付いたんだけど、その日って音がした方向の部屋には利用者は入ってなかった。
特にオチも何もないけど、現場の時に一番ぞっとした出来事だった。