夢のはずなのに現実のような感覚

カテゴリー「不思議体験」

東北に1人旅に行った帰りの話。

社会人だったんだけど予算の都合で帰りは夜行バスだった。

夜行バスは学生時代によく使っていたので慣れたものだったが、その日は日曜の夜で翌朝家に帰ったら即出勤なので乗車したらすぐに寝ることにした。

安いバスだったので隣の席との距離が近く、隣に誰が来るかがキーだった。(酔っ払いとか、真っ暗な中で延々スマホとかいじってる奴が来ると寝付きにくいし、寝ても目が覚めてしまうことがある)

俺は低血圧なせいか眠りを妨げられるとかなり機嫌が悪くなって、そのせいで喧嘩寸前までいくこともあるので頼むからまともなやつ来てくれと思っていた。

そうするとしばらくして人のよさそうな爺さんが隣に座った。
特に邪魔になるような言動もなかったので安心して目を閉じた。

どれくらい時間がたったか、違和感を感じて横を向くと爺さんがこっちをガン見してた。

目をうっすらあけて隙間から白目だけが見えてる。
口は裂けたのかと思うほど異様にニタァと笑った状態で動かない。
俺自身も金縛りにあったようで動けない(金縛りの経験は後にも先にもこの1回のみ)

爺さんも表情が固まったような感じだが、顔は完全にこっち向いてて明らかに俺を見てるとわかる状態で、うわあって声にならない悲鳴あげて視線をそらしてしまった。

我に返ってすぐに視線を戻すと爺さんは普通の顔で前を向いて寝てる。
ただの夢かと思ったんだけど悪夢を見たときの「夢から覚めた」って感覚が全くない。

夢と現実の境が感じられない。

金縛りはすでにとけていて、時間を見ると深夜1時過ぎ。

確かに寝てたんだろうけど、夢を見てたって感覚が全くしない。

寒気を感じつつも翌朝は仕事だからと気を取り直して眠ることにした。

ところがしばらくして今度はフーッという変な音がする。
横に視線をやると爺さんがまた同じ顔でこっち見てる。

フーッという音は息を吐いているような感じに聞こえるが呼吸にしては息継ぎすることなく延々音が続いている。

今考えると異常な光景なんだが、最初に書いたように俺は寝起きが悪く、しかも翌朝に仕事を控えていた。

とっさに、「眠らなきゃいけないのに2回もおこしやがって糞が」と頭にきた俺はこっち見たまま動かない爺さんの顔面をボコボコ殴り始めた。

ところが爺さん殴られてもピクリとも動かない。
白目でこっち見たままニタニタ笑ってる。
息を吐くような音も止むことなく続いてる。

その様子を見てさらに頭に血が上った俺はさらに爺さんを殴り続けた、つもりだったんだがその後の記憶がない。

気が付くとすでに朝、終点に着いていて客は順番に降車を始めていた。
爺さんはすでに降りたのか姿がなかった。

あれは夢だったのだろうか。
というか現実だったらそれはそれで爺さん殴りまくったことになるのでそういう意味でも夢であってほしい。

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