妻は節約派なので、夜間はいつも自分の居る部屋以外の照明を全部落としてたんだけど、1ヶ月位前に突然総ての照明を付け始めたんだ。
消そうとしたら凄い剣幕で消さないでと怒るので、理由を聞いても何も教えてくれない。
不審に思っていたんだけど、今度はトイレのドアを開けっ放しのまま用を足し始めた。
なんのプレイだよと思って強めに注意したら、シュンとなって最近トイレが怖いとか言い始めた。
どういう意味か問い詰めても、それ以上のことは何も言わない。
なんだか最近ずっと元気が無いような気がしてた。
ある時、トイレに行った妻が突然「ぎゃあ!」と本気の叫び声を上げて戻ってきた。
ガクガク震えてた。
そして俺にトイレを確認して欲しいと頼んできたのだ。
だから何事だろうと思って急いでトイレに行き、ドアを慎重に開けて確かめたのだけど、特に異常はない。
蓋も上げてみたけど本当に何ともない。
妻を呼んで一緒に確かめたのだけど、やはり何もない。
しかし物凄く怖がってる。
そして用を足すまでトイレの前で待ってて欲しいと言うのだ。
しかもドアを全開のままで・・・。
いい加減にしろよと思ったのだけど、あまりに様子がおかしいので仕方なく付き合った。
そんな状態がしばらく続いた後の今日。
俺はトイレで信じられない物を見た。
我が家のトイレはLIXILの水洗便器なんだけど、本当にオーソドックスな白色なんだ。
ところが蓋を上げてみたら、白い水洗便器が、汲み取り式のトイレのように真っ黒になってた。
本当に完全に光を反射しないブラックホールみたいになってた。
びっくりし過ぎて生まれて初めて尻餅を付いてしまった。
そしてよく見たら黒くなってるのではなくて、何もない虚空に繋がってた。
トイレ掃除のブラシをそっと入れてみたけど、どこにも触れないんだ。
思い切って落としてみたら、数百メートル下まで落下していくのが見えた。
急に恐ろしくなって蓋を閉め、妻の所に行って「なんだあのトイレは!」と怒鳴ってしまった。
妻が怖がってたのは、この得体の知れない真っ暗な空間を何度も目撃したからだった。
しかしこの真っ暗闇の深い空間は、一体どうして突然現れたり消えたりするのだろう?
こんな話は今まで聞いたことがない。
この家は賃貸のアパートなんだけど、入居するときに、念のため事故物件では無いと聞いたはずだ。
間違ってこの空間に落ちてしまったらどうなるのだろうと思うと、怖くて眠れなくなる。
そしてトイレに行くのがとても怖い・・・。