手招きする百合

カテゴリー「不思議体験」

仲間三人で夏山を縦走していた時のこと。
開けた場所を選んでテントを張った。

その野営地には、たくさんの白い百合の花が咲いていた。

真夜中、仲間一人が急に起き出したために、他の二人は目を覚まされた。

眠りを邪魔した仲間は、テントの床を這いずり回っていた。
何度呼びかけても返事がなく、やがて芋虫のように這い出ていったという。

開け放たれた入口から、百合の花が一輪ゆっくりと揺れているのが見えた。
二人が続いて外に出て見ると、月光の下で揺れていたのは百合ではなかった。

白く細い手が大地から突き出て、おいでおいでをして招いていた。

這いつくばった仲間を無理矢理テントに連れ戻し、まんじりともせず夜を越した。

翌朝、白い手は跡形もなく消えていた。

誘われた仲間は、昨夜のことをまるで覚えていなかったそうだ。

ブログランキング参加中!

鵺速では、以下のブログランキングに参加しています。

当サイトを気に入って頂けたり、体験談を読んでビビった時にポチってもらえるとサイト更新の励みになります!