小学生の頃、神社の近くで遊んでいる時によく一緒に遊んでくれた物知りなお姉さんがいた。
常に本を数殺持っているお姉さんで、時々自分達にも貸してくれていた。
お姉さんが持っていた本は漫画から専門書に至るまで幅広いジャンルをカバーしていて
自分だけでは絶対に読まないだろう本等もよく借りていた。
そのお姉さんが時々連れていってくれていた場所が不思議な場所だった。
神社の裏手に物置小屋のような小さな小屋があり、お姉さんが持っている鍵で扉を開けると、いきなり地下に続く階段があり、その階段を下っていくと地底に池があった。
その池の真ん中にある陸地には扉が一つぽつんと佇んでおり、その扉の中には図書館のような部屋があった。
今になって思えばおかしな光景で、明らかに異界なんだけれど、当時から首吊り人形部屋や魚人街等の異界に何度か迷いこんでいたにも関わらず、自分はその部屋が異界であることに気付けないでいた。
その部屋が妙に現実的な雰囲気だったのも原因の一つだったと思う。
その部屋には見たこともないような古い本が沢山おかれていて、特に面白かったのがお姉さんがタイトルを言って本棚から取り出すと、その本に換わる白い装丁の本で、自分達が同じことをしても本の装丁も中身も白いままだった。
他にもネクロノミコンやらよく分からない字で書かれた本等、興味深い本も多数あったが、お姉さんはその部屋の本だけは絶対に貸してくれなかった。
小学校を卒業する頃にはお姉さんと会うこともなくなり、中学生になってからお姉さんによく遊んでもらっていた友人と共に何度かあの部屋の入り口になっていた小屋の場所に行ってみたけれど、小屋は無くなっており地下に続く階段も見つからなかった。
結局お姉さんの正体もあの部屋がなんだったのかも分からないまま、時々ふと思い出すだけになってしまった。
でも正直もう一度でいいからお姉さんに会ってあの部屋に行ってみたい。