あのおじさんは未来からの使者だった?

カテゴリー「不思議体験」

今から20年近く前。

小学生だった俺は、学校の用務員の初老のおじさんと知り合った。

照明をいじったり壁の修理をしていて、夕方まで校庭で遊んでいると「早く帰らんといかんよ」と怒られたりしたけど、冗談好きの気さくな人で児童とも仲が良かった。

おじさんは小太りで色黒の外観とは裏腹に、時々お洒落な白いバンドタイプの腕時計をしていて、かっこよかったのでよく見せてもらった。

その時計はカーナビみたいに人工衛星と連動していた。
あらかじめ行き先を登録しておいて使うときは目的地を音声入力するだけで音か振動パターンでナビゲーションしてくれるというもの。

試してもらうと澄んだ女性の声でルート案内するのが聞こえた。

俺は当時2000円くらいのデジタル腕時計を持っていたんだけど、わりとすぐに電池が切れてしまうので、おじさんの時計は音まで出してすぐに電池が切れてしまわないのか聞いたら、持ちは悪いけどソーラー充電もできるので特に気にならないらしい。

驚いたのは、手首から外してバンドを左右に広げると黄緑色の薄いプラスチックみたいな板が出てきて、大人の手の平サイズの長方形になった。

これを日光にかざすと短時間でも充電できるとのこと。
反対側の面はスクリーンみたいになっていて、うっすらとだけど地図が表示された。

薄型で大きな液晶画面があって、赤い五角形か六角形のマークがついている格好良い腕時計。

どこで買ったのか聞くと、「○○(俺の名前)が大人になったら買えるよ」とはぐらかされた。

見せ終わると、おじさんは冗談ぽい感じで「誰にも言わないでね」と意味不明なことを言って仕事に戻っていった。

時計のあまりのハイテクぶりに興奮したんだけど、携帯電話がまだ箱型だった時代にそのような時計があったのは妙だよなぁ・・・。

知り合ってから半年くらい経って、おじさんはこの仕事をやめることになった。

だけど、最後に校庭にある古い倉庫(物置みたいなやつ)の固定を補強するとのこと。

学校側が以前に業者に点検を依頼したときは倉庫には特に異常がないと判断されたみたいだけど、おじさんは少し怒って「よく調べないから事故が起こるんだ」と言って独断でセメントや金具を持ち込んで他の数人と作業していた。

何日もかけて補強が終わるとおじさんは「みんなと楽しい話ができて本当に良かった、ありがとう」と言い別れを告げた。

それから2ヶ月くらい後だったと思うけど、授業を受けていると外が急に真っ暗になって風が強まり、何事かと大勢が窓際に集まった時にすさまじい突風が吹いて、俺達は咄嗟に窓から離れて身を伏せた。

ものすごい恐怖だったけど、だれもいない教室のガラスが3枚割れたくらいの被害で済んだ。

後日、先生から聞いた話によると、600kgもある倉庫が風で浮き上がって土台のブロックから少しずれていたとのこと。

後で詳しいことをこっそり聞き出すと、基礎部分が一部老朽化していて、もし補強工事されていなければ飛ばされて校舎の窓を破っていたかもしれないと。

重い倉庫が飛ぶとは誰も思わないだろうし、依頼した業者だってそう思って甘く見たんだと思う。

みんなでお礼を言おうと校長がおじさんに連絡を試みたそうだが、連絡が取れなくなっていたみたい。

最近、固定されていないテントが飛んで死者が出たというニュースがあったけど、悲しくなるよ。

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