刃物男の正体

カテゴリー「不思議体験」

一年前、北関東のファミマでバイトしてた時に変な体験した。

俺は夜勤専門で夜0時~朝8時までのシフト。
帰ったら夕方まで寝るという生活だった。

問題はその時に見る夢で、内容は、コンビニで働いている俺に向かって、変な男が刃物持って追い掛け回してくる、というものだった。

最近コンビニ強盗が多いから自分で心配してたのかな?と思ったが、さすがに2週間連続で見た時は変に思った。

コンビニの仕事を終えて朝勤の新人の女の子と変わる時に、ふとそんな変な夢の内容を話題にしてみると、その子は不審な表情になって、「私も最近似たような夢を見ます」という。

彼女の夢は俺とほぼ同じで刃物男に追い掛け回されるという内容らしい。
それも、2週間前このコンビニで働き出してから、という事だった。

そういえばこの子がバイトを始めたのと、俺が夢を見出したのは同時期だった。
彼女は共感を覚えるよりも気味が悪いと思ったようで、「バイトを辞めたい」とまで言い出した。

しかし、まだ2週間目だし、店長も良い人だからそうそう迷惑は掛けられない。
俺も夢を見ずに済むなら他のコンビニ店に移ってもよかったが、たかが夢でそこまでするか?とも思った。

とりあえず「この話題は誰にも話さないほうがいい、その内に夢も見ないようになる」、という結論になった。

その日から1週間経った。

まだ夢は続いていたが、俺は夜勤明けだったので帰るとすぐに布団に横になった。
すると、今までとは違う夢を見た。

夢の中でも俺は布団に寝ていた。
「ガチャッ」、と玄関のドアが開く音がして、誰かが足音を立てながら入ってきた。

そいつは何か重そうな物をズルズル引きづりながら、俺の寝ている部屋に向かってゆっくり歩いてくる。
俺は今までにない恐怖感を感じた。

いつも夢に出てくる刃物男だと直感した。
ヤツがいつも持ってる出刃包丁のような刃物を鮮明に思い出した。

俺は布団をめくろうと手を動かしかけたが、いつの間にか金縛り状態になっていて動けない。
その瞬間、この夢の結末を想像した。

ヤツの包丁が布団ごと俺の腹をゆっくりと刺し貫く場面だ。

ズルズルと何かを引きづる音は、俺の部屋の前で止まり、ドアがゆっくりと開いた。

右手に包丁。
左手には焼けた人間のような黒い塊。
そして喪服を着た笑顔のその男は、コンビニの店長だった。

俺は泣き出してしまった。
悲鳴をあげようとしても声も出ず、体は布団から抜け出せないままだ。
店長は笑顔のまま左手に引きづっていた物を床に放ると、寝ている俺に包丁を向けて飛び掛ってきた!

そこで俺は汗びっしょりで目を覚ました。
もうバイトを辞めるのも仕方がないか、とすら思い始めていた。

その日の夜の勤務が終わり、俺はそのまま事務所で朝方に来るはずの店長を待っていた。

店長より先に、同じ朝方勤務の例の女の子が来ていたが、今日でここを辞めるという。
理由を聞いた時は、「ここより条件の良いバイトがあったから」と誤魔化してはいたが、夢の話を匂わすと表情が変わった。

お互いの夢の内容を確認しあった時には、彼女は手が震えるくらいに動揺していた。
俺はそのまま店長を待ってバイトを辞めた。

丁度その時間帯を希望していた新人がいるらしく、あまり迷惑は掛からなかったみたいで、安心する反面、俺は店長の顔をロクに見る事が出来なかった。
朝勤の女の子もその日限りで他の職に移ったらしい。

俺はその日以来夢は見なくなった。
結局、原因は今でもわからない。

ただ、事務所で店長を待っていた時に、彼女と一緒に働いていた30代のベテラン女性に店長の事を聞いてみた。

店長は性格が良くて客受けもいい人だが、”前科持ちという噂があるらしい”、と。

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