俺は従兄弟(いとこ)達の家に二度と行かない。
ちょうど去年の夏の話。
俺は誘われて従兄弟の家に行った。
茨城県の山の奥深い所で、人の気配もなく田んぼがずらーっとならんでいた。
夏とは思えないほど涼しく、とても居心地の良い所だった。
従兄弟達とは昔から仲が良くて、小さい頃はしょっちゅう遊んでいた。
従兄弟は四人いて二人は仕事を探しに東京に行っていた。
あとの二人は父親の跡継ぎで農業をしていた。
そんな従兄弟の家に泊まっていたある日の夜、深夜友達とメールをしていてそろそろ眠くなって寝ようとした時、変なニュアンスで「いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」と山から吃驚(きっきょう)するほど大きな山彦が聞こえ、俺は布団から飛び上がった。
ありえない。
こんな夜中に、ほとんど明かりが無い山に入る奴はいない。
今まで従兄弟達の家に何回も宿泊させてもらっているが、こんなことは一度もなかった。
俺は急いで従兄弟達を起こしに行ったが、従兄弟達は既に起きていた。
従兄弟のうちの兄の方がびっしり汗を掻きながら俺に言った。
「まだ起きてたのか、もう寝ろ!!」
かなり焦っていたようだ。
「何があったの?今のは何?」
「お前は今すぐ寝ていろ!」
あまりの形相にビビったが、部屋に戻るふりをして壁ぎわに隠れていた。
すると弟の方が「どうすっぺ兄ちゃん!!○○(俺)も家にいんだぞ!」
「分からん・・・・・・とりあえずアレ持って来い」
弟は縁側から真っ暗な外に出て、錫杖(しゃくじょう ※よく坊さんが持っている棒)と30cmくらいの古い木箱から大量の古い紙切れ、それと運動会の綱引きで使うような縄を持ってきた。
しかし俺が覗いているのを従兄弟にバレてしまい、兄に「お前は部屋に戻れ!それと俺達は今から山に向かうから、お前は家のすべての窓やドアに鍵を掛けていろ。一切開けては駄目だ。外から足音がしたり、気配がしたりしても一切窓を覗くんじゃない、いいな?」
俺は半分恐怖と半分意味が分からないといったような感じで首をかしげて頷いた。
そして従兄弟達は真っ暗闇の中、懐中電灯を持ち、シャリシャリと錫杖を鳴らしてお経みたいなのを唱えながら山に行ってしまった。
俺は大急ぎでトイレや台所、居間の窓を閉め、玄関の鍵をし、部屋の鍵をし、従兄弟達が帰るのを待っていたんだ。
従兄弟達の姿が見えなくなり、窓のカーテンを閉めて、恐怖に怯えながら部屋に篭った。
しばらくして急に風が強くなり家の玄関が窓が風で揺らされた。
すると家の周りから大量の足音が聞こえだした。
しかも何か呟いている。
「ショウヨオドリマワリタシ・・・」
その声は徐々に大きくなってった。
もう窓のすぐそばで言っている様な感じだった。
心臓の鼓動がさらに高まってった。
もう破裂するぐらい。
その瞬間カーテンの隙間からその足音の正体が分かってしまった。
かなり小柄な信じられないくらいガリガリにやせ細った目が異常にデカい少年だった。
その上、その少年と目が合ってしまった。
俺は身体を硬直させ、すると、あの山彦の時と同じようにまたあの異常なニュアンスの「いいいぃいぃいぃいぃいぃ」が聞こえ出した。
泣きながら目を瞑って「南無阿弥陀仏・・・・・・南無阿弥陀仏・・・・・・」と呟いていた。
早く従兄弟帰ってきてくれと感じながら・・・。
その緊迫の状態が20分ぐらい続いた頃、シャリシャリと音が聞こえた来た。
その瞬間人生で初めて小便垂れ流し涎垂らして泣きながら気を失った。
目を覚ますと従兄弟の部屋だった。
兄弟で何か話し合っていた。
しかし俺が起きたのを見ると話をやめて、兄の方が俺に謝ってきた。
「申し訳ねぇな○○・・・・・・今回は運が悪かったんだ。忘れとけ」と俺に言った。
縁側には無数の小さな足の形をした足跡があった。
俺があれはなんだったのかと尋ねたが、二人とも「お前が知ることは無い」しか言わず、結局後日家に帰ることになった。
まだあの日から1年だが、忘れられない日になってしまった。
いつも行っていた従兄弟の家にも、もう行っていないし、行きたくも無い。
連絡もとってない。
長文申し訳なかった。
こいつに関する情報あったら教えてくれ。
少しでも情報が欲しい。
場所は茨城県玉造町だ。