行き倒れの死体

カテゴリー「怪奇スポット」

東京じゃねーけどさ、20年以上前、某県の有名砂丘で人死にが見つかったんだよ。
行き倒れな。

別に人死に自体はそこまで珍しいことじゃない。
あそこで行き倒れる奴ってのは、言ってみればホームレスなんだよな。

どうもあの県のホームレスの中には、最後の場所に砂丘を選ぶ奴がいるらしいね。
ホームレスが行き倒れたって新聞なんかにゃ載らないから現地の人間もよく知らんだろうが、あの砂丘は昔も今もそういう場所。

あそこって、昼間なら異物、例えばゴミみたいなもんが捨てられてると結構遠くからでも見えたりすんだけど、ある夏の夜、砂丘保安官(の前身みたいなの)やってた親戚が海辺の地面に小さな赤い光を見たらしい。
レーザーポインターみたいな感じか?数秒こちらに鋭い光を放って消えたと言う。

とにもかくにも光源の辺りに行って、懐中電灯で地面を探してみると、恐ろしいことに目と目が合った。

と言うのも、人間か、別の獣のものか知らんが、とにかくそれくらいのサイズの目玉がひとつ、こちらを向いて転がっていたんだそうだ。
一瞬だけおったまげた親戚は、すぐ冷静を取り戻して近くにあるかも知れない屍骸を探した。
そりゃ目玉があるんだから屍骸だってあるかも知れないだろう。

しかし何も見つからない。
捨てられてたひしゃげた空き缶一個、空いてる手に持って、きびすを返し戻ろうとしたその時、視界の端で懐中電灯の光が何か捕らえたのに気付いた。

目を向ける。
その途端、何かに後頭部を思い切り引っ張られて倒れこみ、気を失ってしまった。

で、気がつくと朝。
口の中にぬるっとした固体が入っているのを感じ、吐き出すと目玉だった。

親戚嘔吐。
今思い返すと、あの時気を失う前に見たのは「犬みたいな獣」か「人間」の屍骸だったと言っていた。犬と人間じゃ全然違うような気がするんだが、親戚は区別がつかなかったというか、どうも一瞬だけ目に入った一つの屍骸からその両方の感じを受けたみたいなことらしい。
屍骸の数は一つだったと、これは確かだと言っていた。

親戚は辺りを見回したが、その屍骸はついに見つからず、その後一週間ほど寝込んだ。

寝込んだ翌日、親戚が気絶したのとは違う場所で行き倒れの死体が見つかった。

その死体はホームレス風ってわけじゃなかったが、身元が不明。
遺体の状況が「妙」だったんで警察が軽く捜査したらしいんだけど、何も出てこず結局は無縁仏。
あんまりアレだから書けないけど、見つけた仲間によると、手に何者か人間の目玉を握っていたということ。

その後親戚は事故で片目を失った。
この話との関連性は知らない。

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