私は以前不動産の仕事に携わってきました。
不動産といっても賃貸や家関係ではなく、土地の売買でした。
事業開発とかあると山や畑を持っている方に挨拶してその土地を売ってもらい、それを纏め事業主へと売る。とゆうような仕事です。
まぁ、いわゆる「地上げ屋」と呼ばれるものです。
私は女ですが、地主さま達(おじいちゃんが多い)には印象が良かったらしく、良く交渉に出かけてました。
ある日大きな病院を作るという依頼がありました。
まずは公図と合うか実際に現場に行き確かめに行きます。
周りは山と畑だらけですが、道を挟んだ向こう側には普通の民家が並んでいます。
その中に異様な家屋がありました。
その家屋だけは畑側に建ててあり、門も外壁もなく家だけが建っており、裏口から居間にかけて壊してあり、しかもそのまま放置してありました。
壊す途中なら、クレーン車やユンボなどが置いてあったりするけど、周りには何もなく余計に異様でした。
私はしばらくその異様な感じに動けず、遠目から眺めていたら、カブ(バイク)に乗ったおじいちゃんが畑に現れました。
私は「おじいちゃん。こんにちわ。この家ってどこのお宅かわかる?」
おじいちゃんは「ああ~。もうその人たちはおらんで~」(居ないとゆうこと)
私は解体も途中だし、どうなってるの?
持ち主は引っ越したのか?・・・等々おじいちゃんに聞きました。
おじいちゃんは鍬を家の裏口に向けながら、「可哀想な家じゃ。可哀想な◯◯(名前)じゃ」と言いながら私に話してくれました。
その家には家族3人で暮らしていたらしいです。
父親・母親・高校生の息子長年の夢であったマイホームだったらしく、交通など不便だったにも関わらず気に入っていた・・・と。
生活する内に母親が体調や耳鳴り空耳などの不調を父親や息子に相談しはじめましたが、父親も息子も朝から夜まで家に居ないため、『病院へ行ってきたら?』程度だったらしい。
母親は色々な病院へ行くも原因が分からないまま神経内科で処方された薬を飲んでいたらしいです。
それでも体調や耳鳴りは一向に良くならず寧ろ悪くなるばかりその内に「この家は呪われている。
幽霊がいっぱいいる」などと言い、父親や息子は困ったそうです。
母親はどんどんやせ細り、息子が大学の為家を離れて間もなく原因不明で亡くなったらしいです。
父親の生活はどんどん荒れていき会社にも行かなくなり、家に閉じこもるようになったら、父親にも耳鳴りや空耳が聞こえるようになり、「母親が言っていた事は本当だったんだ」と確信しお祓いを頼んだらしいです。
お祓いの人は「この家自体が霊の溜まり場になっている」
「こんな多くては払いきれない」
「取壊して引っ越ししなさい」と言い、お祓い料も取らずに早々に帰ったらしい・・・。
父親は解体業者に依頼し家を取り壊す事に決め、いざ裏口から壊していくと・・・。
その家の基礎(家の下にコンクリートや石を埋めて地盤を固めるもの)
には色々な墓石が使われていたそうです。
墓石が出てきて、解体業者も逃げて行ったと・・・。
私はこの話を聞いてしばらくして不動産屋を辞めました。
今、あの家がどうなっているのか。
分かりませんが、あれから病院が建ったという噂は聞かないです。
三重県の北の方の土地です。