不法侵入の正体が・・・

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

高校生のとき、互いの家を気軽に行き来できる仲の友人Aがいた。

Aが不在のときうっかりお邪魔しちゃっても、Aのお母さんが「いらっしゃい!いまね、ちょっと買い物に行きたいから、留守番しててもらえないかしら。おやつは冷蔵庫にあるからね~」って留守を任してくれるくらいだった。
Aのお母さんとうちの母さんもすごく仲がよくて、ほんといい関係を築かせてもらってた。

あるとき、うちのばあちゃんの畑でとれた野菜を御裾分け(おすそわけ)しようと思ってAの家へ日曜の昼頃行ったんだ。

呼び鈴押しても返事が無いときは自転車のサドルに隠してある合鍵使って入って、居間に物置いてってもいいよって言われてたんでいつも通りに鍵取って玄関開けてお邪魔した。

だけど家に入ったら、二階からなんとなく人の気配がすんの。
日曜の昼間にふたり揃っていないことなんか今まで無かったから、もしかしたらAかAのお母さんのどっちかが具合悪くて倒れてんじゃないか?って、咄嗟に嫌なこと考えて、玄関に野菜置いて急いで二階に上がった。
泥棒がいる可能性もあるから、音を立てず忍者みたいにダッシュしたのさ。

Aの家の二階は、階段上って左側に、奥から納戸、Aの部屋、トイレ、Aのお母さんの部屋って順になってて、階段からちょっと首伸ばして二階の様子を伺うと、奥から「ブッ、ブッ、ププッ、プッ、ブッ」って空気が漏れてるみたいな音がする。

ある程度その「ブゥブゥ」って音がすると、その音の主は奥の納戸から出て、Aの部屋に入った。

するとまた、ブッ、ブッって音がし出す。
もうこりゃ”絶対に変なやつがいる!”と思って、階段からそろ~っと立ち上がってAの部屋の前まで移動した。

すると、見たこともないジャンパー着たオッサンが、Aの部屋でツバ吐いてた。

「ブゥブゥ」って音の正体はこれだった。

絶句しちゃって立ち尽くしてたら、オッサンが振り向いて、驚くこともなく「やあ、こんちわ!」って元気に挨拶してくんの。

俺ももう「あ、はい・・・うっす・・・」って返事しかできなかったよ。

「何してんすか?」って尋ねたら「悪い虫がつかないようにね!こうしてるのさ!」って。

Aの部屋にあった可愛い小物、ぬいぐるみとか、鏡台とか、箪笥の中の服とか下着にツバかけまくってる。

完全にビビッた。
頭おかしい人がAの家に入っちゃってる。

警察呼ぼうと思って玄関の野菜抱えてダッシュで近くの交番まで行った。
警官さんが3人も着いてきてくれたけど、Aの家に戻ったときにはもぬけの空・・・。

外出してたAとAのお母さんも丁度タイミングよく戻ってたんで、事情説明したらふたりとも家の前の道端に泣き崩れちまった。

俺が見たツバ吐きオッサン、Aのお父さんだった。
離婚してからだいぶ経つのに、Aたちが住んでる家を探し出しては周囲をウロウロするっていうのをもう何度も繰り替えしてたらしい。
「でもまさか家に入ってそんなことしてたなんて・・・」って、Aのお母さんぐったりしてた。

「ツバ吐かれたものを全部捨てる!」って、Aが泣きながら暴れるのを警官さんと俺とで羽交い絞めにして止めた。
結局捨てたんだけどね・・・。

だから俺と俺の家族もちょっとお金出して、新しい下着とか服とか買う足しにしてもらったし、ツバ事件のこともあったから、みんなでAの家の大掃除もやった。

その後は、鍵の管理もちゃんとするようにしてたし、仕事してたAのお母さんの送り迎えを俺の兄ちゃんと父さんが交代でやってくれたり(俺は免許無かった)、あと警官さんも割りと真面目に見回りやってくれたりで、ツバ吐きオッサンが出たのは、後にも先にもそれ一度きりだった。

長文失礼しました。

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