ストーカー家族

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

関西圏の田舎の村の出来事。

とある山間部の集落に転勤になった親戚の保科さんは、ある時、村の可哀想な女の子の話を聞いた。
その女の子(出水田沙保里・二◯代前半)は、両親を早くに無くした後、資格を取って健気に働いていたんだが、職場のストレスなどから精神を病んで、引きこもりになってしまったらしい。

彼女の弟や親戚達が、交代で世話をしにいっているという。

保科さん:「沙保里ちゃんは美人なのにねえ・・・・・・可哀想にねえ・・・・・・」

保科さん:「・・・・・・ほら、あの子はお母さんも早くに亡くなったから・・・・・・」

薄幸そうな美人についてちょっと興味を引かれた保科さんは、何かその女の子の力になれないかな?と、お年寄り達に詳しい話を聞き始めた。

お年寄り達:「保科さんは優しいねえ。でも、あの子はちょっと難しいんじゃないかねえ」

お年寄り達:「ちょっと、思い込みが激しすぎるというか・・・・・・男が絡むと、ねえ・・・・・・?」

言葉を選びながら、お年寄り達は沙保里について語り始めた。

沙保里が精神を病んだ理由は、以前の職場の男性に関することだった。
それも・・・・・・沙保里自身が、相手の男性に執拗なストーカー行為を働いていた為に解雇されたのだという。

保科さん:「その男、別れる時に沙保里ちゃんに何か酷いことでもしたんじゃないの?」

恋愛関係のもつれなのでは?と疑問を持った保科さんの質問に対して、お年寄り達は「いやぁ・・・・・・その人は沙保里ちゃんに手を触れた事さえ無かったというんだよ」

沙保里の奇行は実家に帰ってからも続いた。

地域の盆踊りで久しぶりに再開し、ほんの一度だけ会話した、地元のある男性_洲巻金吾にも、同じように思い込みによるストーカー行為をやり始めたのだ。

金吾には当時、仲の良い女の子がいたのだが、沙保里は彼女にも嫌がらせをしていたという。(※現在、金吾とその彼女は地元から離れて遠くへ引っ越したそうだ)

お年寄り達:「金吾君はねえ・・・・・・金吾君のお母さんもねえ・・・・・・」

お年寄り達:「実は、沙保里ちゃんのお父さんも、金吾君のお母さんをずっと好きだったらしいんよ」

お年寄り達:「・・・・・・お父さんだけでなく、ほら、お祖母さんも・・・・・・」

お年寄り達:「ああ・・・・・・あったねえ、そういえば、だいぶ昔の話だけど」

保科さんはさすがにゾオッと背筋が寒くなった。

お年寄り達の話によると、沙保里の家系は男女を問わず、戦前の大昔から金吾の家系の人間に執着し、ストーカー行為を繰り返していたというのだ。
沙保里の家系は、沙保里をはじめ美男美女が多いが、金吾の家系は容姿はそれほど優れているわけでもない。
親子で趣味嗜好が似るというのはあるかもしれないけど、それにしたって・・・・・・。

地元の人によると、沙保里自身は子供の時はごく普通の子供のように見えた。
おかしい所など無かった。
しかし、ある時期から急に親や先祖の行動をそっくり真似して、常軌を逸した行動をするようになってしまうのだという。

そして洲巻家の人間は出水田家をことごとく振って、他の人と結婚する。

これもまた先祖の行動をトレースするかのように。

出水田家と洲巻家、何の因縁があってこんな状態になったのかは全く分からないんだけど、基地外じみた精神異常ストーカーと、その被害者の話を、よくあること、とあくまで世間話のついでといった感じで話すお年寄り達に、保科さんにはよりいっそうの怖さを感じたという。

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