殺されなくてよかった

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が中学生だったとき、同じ部活にイスラム教徒のサンニ(仮名)ってヤツがいた。
俺はコイツと妙に気が合わない部分があり、よく喧嘩したりしてた。
とはいっても殴り合いってほどではない。
先生に見つかったりしたら大変だしな。

コイツはちょっとからかうとすぐにキレるヤツだったんで、「バーカバーカ」とでもいってやれば、すぐに追いかけてきた。
分かるやつにはわかると思うが、逃げるのも楽しい。
で、たまに自分の持ち物がそいつに隠されてたり、悪戯されたりするわけだ。
その繰り返しだな。

これだけみると可愛いもんかもしれないが、本人たちは7割は本気で憎しみあってたと思う。
ある時は、自転車で4,5キロ追い掛け回され、商店に逃げ込んだこともあるくらいだ。

あるとき、買ったばかりの筆箱がぐちゃぐちゃにされてた。
落書きされ、切られ。
それは母親が買ってきてくれたもので、なんだか当時本気で頭にきて、先生にチクってやった。
サンニはこっぴどく怒られ、俺はスカッとし、気持ちよく帰宅した。

次の日、ヤツは俺に仕返しにくるかと思い、何時来ても俺は最高のダッシュで逃げてやろうと待ち構えてた。

2時間目かな、終わったときに廊下で、次は体育か~などと思ってた。
そのときだった。

ヒュルッとなにかが前を通ったと思った次の瞬間に、後ろから首を絞め上げられてた。
俺は一瞬で”サンニ”であると理解した。
そして、これが単なる首絞めでないことも・・・。

俺は首を、靴紐より少し太い程度の紐で絞め上げられてた。
最初に「ひゅるっ」と目の前を通リ過ぎたのは紐だった。
足が浮いてる気がする。

やばいと直感的に思った。
いまこのフロアには誰もいない・・・。

今思うと、金玉握れば離す気もする。
が、咄嗟に首を絞められると頭が回るもんじゃない。

意識がおかしくなり、「ごはっ」と変な咳?がでた。
走馬灯は見えなかったが、このとき少し『死』を意識したと思う。

次の瞬間に、衝撃と共にサンニの体制が崩れ、俺は咳をしつつ涙目で転げ回った。
同じ部活の友達、山口がタックルしてくれたのだ。
意識がまだはっきりしないものの、山口がサンニを説教しているのを見て安堵した。

俺はまだ咳き込みながら、「お前、ふざけるなよマジで死ぬとこだったぞ・・」と言って、とりあえず逃げておいた。
後で山口に、「お前もさっきのは危なかったぞ。仲直りしておけよ」と言われた。

なんというか、サンニも殺そうと思ったのではない。
ちょっと度が過ぎたか、キレたんだと思う。
度が過ぎてるにも程が・・・と思うかもしれないが、それが国柄の違いというか・・・。
その証拠?に、のちにサンニとは和解し、友達になった。

まぁ、俺がいいたいのは、特に外人に対しては接し方に気をつけろってことだ。
日本人の常識は日本人にしか通じない。

いま俺は夢だった仕事に就け、日々充実し、「あの時殺されなくてよかった」とたまに思う。
山口はオリンピックに出場したとかって話だ。
まぁ、マイナー競技ではあるのだが、陰ながら応援している。

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