ある夏の暑い夜の話。
俺と友人のAとBは、その夜自宅で酒を飲んで盛り上がっていた。
しばらくすると酒もつまみも無くなり、雑談にふけっていた。
俺:「今夜は妙に蒸し暑いな」
A:「そうだな、・・・近くの小学校のプールに行かないか?」
B:「いいね!こんな夜中じゃ誰かに見つかる心配もないしな!」
時刻は既に深夜二時を回っていたが、みんな賛成した。
歩いて十分の場所に小学校があり、三人は到着した。
プールのフェンスを乗り越えて、みんな裸になってプールに飛び込んだ。
近くには外灯もなく、真っ暗闇の冷たいプールの中で三人は泳いで楽しんでいた。
しばらくして、泳ぎ飽きたBが「鬼ごっこをしよう」と提案した。
だが、真っ暗闇のプールの中で鬼が子を捕まえるのは難しいのではと思われた。
するとAが「じゃあ、子はプールの四辺しか移動出来ない事にしよう」と、提案し、そうして、三人は真っ暗闇の静寂なプールの中で鬼ごっこをした。
鬼の初期位置はプールの中心で、十秒後に子を捕まえに行く。
鬼も子も波音を立てれば位置がバレてしまうので、迂闊に行動が出来なかった。
しかし、波を立てず息を殺す、真っ暗闇の中での鬼ごっこは独特な緊張感を味わえた。
そうして鬼が変わりがわりになっていく中、最後の鬼ごっこが始まった。
最後の鬼はAだった。
俺とBは静かに二手に散らばり、十秒後、Aは静かに潜りこんで存在が消えたのを感じた。
俺はプールの壁に沿いながら、すり足で移動した。
背後から、かすかな波を感じた。
Bだと思ったが、Bと俺は逆方向に散ったのでこんな早くに合流するのは有り得ないと思った。
背後の気配は徐々に俺に近づいて来た。
こうなれば、子である俺の位置が鬼にバレている可能性がほぼ確定的なので、俺は咄嗟にバタ足で逃げた。
こうすればBにも鬼の位置を知らせる事が出来るからだ。
「捕まえたーっ!」
「ちきしょっ!!」
遠くから鬼であるAと、子のBの叫び声が聞こえた。
「え・・・?」
俺はバタ足を止め、一瞬何が起こったのか分からなくなったが、徐々に、とてつもない悪寒を感じた。
俺の背中に何かが、静かにぶつかった・・・。
途端に身動きがとれなくなった。
恐る恐る手を後ろに回し、ぶつかった何かに触れてみると、小さな頭をとらえた。
多分小学生くらいの大きさだった・・・。
遠くからAとBが「もう上がろうぜー!!」と俺を呼ぶ。
俺は一旦深呼吸して、鉛になった様な足を少しずつ前に動かし、歩いた。
頭がついてくる・・・。
とても泳ぐ気にはならず、少しずつ足を進めて前進した。
無事プールサイドに上がり俺とAとBはプールを後にし、それぞれ帰宅した。
次の日の朝、昨日の事がまだ鮮明に頭に残っているなか・・・テレビをつけると「今朝○○小学校の児童がプールの排水溝の中で水死体で発見されました。」と。
AとBもニュースを見たらしく真夏の暑い朝から三人は冷や汗をかいていた。