あの御巣鷹山・・・

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺の職業自体は建設業の会社員なんだが、わりと自衛隊上がりの人がいるんだよね。
いろんな資格持ってる人が多いから、重宝されるのかもしれんが。

工事課のT係長もそういう経歴の持ち主なんだけど、この人は、日航機墜落の事故現場に出動したことがあるらしい。

そう、あの御巣鷹山・・・。

曰く、「『怖い』ってのはああいうことだ」とのこと。
人体の破片、線香の匂い、嘔吐する同僚や警察の人。
訳も無く涙が出てきて仕方なかったそうだ。

T係長:「人生が粉々の黒焦げになって、そこらに散らばってるのが堪らんかったよ。この人たちは、飛行機堕ちるまでどんだけ怖かっただろう、無念だっただろう、と思ってな」

ボソボソとした口調で淡々と仕事をこなす温厚なT係長が、ヤクザ丸出しの土建屋相手にも一歩も引かない肝っ玉なのが、少しだけ理解できたエピソードでした。

あの事故で亡くなった会社員の、妻と子に宛てた手帖に走り書きの遺書を読んだとき、涙が止まらなかったよ。
そして同時に、人の尊厳に感服した。

転載。
搭乗していた52歳の会社員の遺書。

『マリコ、津慶、千代子。どうか仲良くがんばってママをたすけて下さい。パパは本当に残念だきっと助かるまい。原因は分らない。今5分たった。もう飛行機には乗りたくない。どうか神様たすけて下さい。きのうみんなと食事したのが最后とは。何か機内で爆発したような形で煙が出て降下しだした。どこえどうなるのか。津慶しっかりたのんだぞ。ママこんな事になるとは残念だ。さようなら。子供達のことをよろしくたのむ。今6時半だ。飛行機はまわりながら急速に降下中だ。
本当に今迄は幸せな人生だったと感謝している』

死を前にパニックの中で、ここまで書けるのかと感服した。
そして、この遺書を受け取った奥さんの言葉にまた泣いた。

「十分に愛してくれました。この最後の言葉によって、私はあとの人生を生きてゆけます。暑い中、厳しい場所で、事故の調査に当たっている方々に感謝致します」

人はまだ捨てたもんじゃないと思った。

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