経営者にとっては恥

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

取引先で起こった話。

そこの社長夫妻は、やたらと観葉植物の鉢を持ち込んだり、思いついた時やヒマな時に株分けして、鉢を増やしたりするのが好きだったのだが、継続的に必要な水遣りなんかは自分たちでは全くせずに、事務のおばさん(当時38歳、地味で未婚)に丸投げしていた。

事務のおばさんは本当は植物なんて全く興味はないし、ただでさえ狭い事務所を占拠する『その辺に置いておけば勝手に育って殖えていく植物』を苦々しく思っていたくらいだった。
実際、他の従業員や来客も、たまに植物の枝や鉢に足や荷物を引っ掛けて迷惑していた。

その会社を訪問したある日。
事務のおばさんが「結婚するので、2ヵ月後には退職します。これまでありがとうございました」と挨拶してきた。
その1ヵ月後に再度その会社を訪れたときには、既におばさんはおらず、25歳くらいの若くて可愛い女の子事務員に変わっていた。

「あれ?○○さんはもう退職されたの?有給消化中?」と聞いたが、女の子は言葉を濁した。

その後、その会社で仲の良かった営業さんに詳細に聞いたところによると、おばさんは秘密裡に邪魔な植物を粛清しようと決心し、特定の鉢を狙って、水をくれるフリをして実際は熱湯を掛けていたそうだ。
10日ほどで植物は謎の根ぐされを起こし、枯れた。
おばさんはこの方法で10鉢ほど粛清していた・・・。

おばさんはその日も熱湯を植物の根っこに掛けようとしていた。
ところが突然、その鉢の隣に置いてあった、高さ2m超の社内で一番大きくて古株のゴムの木が、おばさんに向かって倒れてきて、おばさんは弾みで熱湯を頭から被ってしまった。

あり得ない場所で熱湯によるやけどをしたため、おばさんの所業も社長夫妻にバレてしまった。
おばさんのヤケドは、顔はそれほど酷いことにならなかったが、頭皮は結構深刻で、彼女の頭は今、まさしく枯れたハゲ山になっているらしい。

一方で植物を『産みっぱなし』の社長夫妻は、「あのゴムの木は、ウチが創業したときに記念でプレゼントされて、それから25年、今回のことも含めてずっと事務所を守ってくれているんだ!」と周囲にその話を吹聴しまくっているらしい。

従業員がそんな行為をしていたなんて、経営者にとっては恥なのにね。
そして、相変わらず植物の水遣りは、新しい事務の女の子に丸投げしている。

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