仲間に腕を切り落とされ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

昔、TVで見た映画。

偶然、お宝の隠し場所の地図を発見した数名の男たち。
井戸の底にあると言う財宝を探しに出かけた。

ところが落盤事故が発生し、男たちは狭い空間に閉じ込められる。
時間が経つにつれ、男たちを飢えが襲う。
だが、残っている選択肢はひとつだけ。

「誰かに犠牲になって貰うしかない。公平にくじ引きで決めよう」

くじを引き、当たった男は泣き叫ぶが、仲間に腕を切り落とされ、それは全員の食料となった。

だが、皮肉なことにその直後、救助隊が現れる。
衰弱はしているが無傷の男たちと、片腕を無くし『たった今』起こった悲惨な出来事を訴える一人の男。

「そいつは落盤で片腕を失い、そのショックでずっとそんなたわ言を言っているんだ」

友人の腕を食らった男たちは、自らの罪深い行為が発覚するのを恐れ、救助隊にそう言った。
腕を失った男は『事故による精神錯乱』と判断され、精神科の病院に入院させられる。

数年後、『片腕の男が退院した』との噂が流れ、彼の腕を食った仲間たちは危惧を感じる。
そしてそれは現実となり、仲間の一人が片腕を切り落とされた屍体で発見された。

男たちは片腕の男の居場所を探すが、手がかりは男の娘ただ一人。
男たちは言葉巧みに娘をてなづけようとする。

男たち:「君の父上は、錯乱のために我々に復讐をするつもりなんだ。だが、僕らは彼を救いたい」

娘は父親の捜索に協力すると約束した。
だが、片腕の男の行方は判らず、一人を除いて全員が次々に殺害される。
屍体は全て片腕が切り落とされていた。

ただ一人残った男の元へ、娘から連絡が届く。
『父親の隠れ家を見つけた』と。

辺鄙な隠れ家へやって来た最後の男。
隠れ家は殺人者にふさわしく、頑丈そうな作りだけが取り得の、家具ひとつ、窓さえ無い小屋。
その時突然、重い扉が彼の後ろで音を立てて閉じる。
完全な密室となった小屋。
男は半狂乱で扉の覗き窓から外を伺う。

そこから見えたのは、車椅子に乗った片腕の男とその娘。
娘は無慈悲に、「残念だがそこから出してあげることは出来ない」と、瞳に父と同じ狂気を宿して答えた。

忌わしい過去と同じ密閉された空間。
閉じ込められた男は絶叫する。

娘:「そこには何も無いわ。水も、食料も。でも気の毒だから、これをあげる」

そう言って娘が覗き窓から差し出したのは、鋭利に研がれた、人の腕ぐらいは易々と切断できそうな、一本のナイフ。

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