電話貸してください

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

小学校の頃の体験で、もう30数年ほど前のこと。

時間帯は夜10時頃。
その日、親は親戚の家に急用でいっていて帰宅は夜遅くの予定。
私は一人留守番していたところ、裏の台所側のドアがノックされた。

てっきり、右隣の家のオバサンが心配し「私の親に頼まれていた」、確認しにきたんだと思い窓からみたら、誰もいない。
おかしいな?と思って部屋にもどろうとしたら、今度は表玄関をノックされた。
そっと窓から覗いたら誰か立っていた。

シルエットの感じから女性だとわかったので、窓を開けて「オバちゃん、私はだいじょぶだよ」と言ったら、「ああーーああーー」という気味の悪い声がかえってきて総毛だってしまった。

その人は全く誰だかわからない女性。
なぜわからないかというと、真っ黒い人のシルエットだけで服装も顔も見えなかったので。
女性はこういってきた。

「電話貸してください」

見ず知らずの人を家にあげることは出来ないし、「近くにお店があるからそこで公衆電話がありますよ」といったら、くいさがって「貸してくれ」と。

「知らない人はあげられないので駄目なんです」といったら「わたしは知ってる」と言い返してきた。

ちょうどその時、右隣の家のオバサンが様子を見に来てくれた。
すると女性は去って行きました。

後日わかったのは、近所に引っ越してきた女性らしいんだけど、自殺未遂を何回も繰り返したそうで大家に追い出されたもよう。

今思い返して不思議でならないのは、夜間に誰か訪ねてきても玄関口のライトや屋内の照明から、真っ黒い人の形だけで顔も何も確認できなかったこと。

あとからやってきたお隣さんは全てくっきりと姿が見えたこと。
あの女性は、何か悪い霊に憑依されていたんじゃないかと思えてならない。

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