死ななくて良かった

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

私は両親と兄から虐められて育ち、中卒で働きに出ていた。

ある日、大学受験を控えた兄が私とは一緒に食事をしたくないと言い出して、両親から玄関で食べるように言われて、辛くなり家出した。
自転車で湖まで走り、奥の森で首を吊る事にした。

途中で荷造り紐と、からあげくん一個を買った。
森奥の真っ暗な中でからあげ食べていたら、小さな狐がカサカサ音を立てながらやって来た。

残りの1つをあげると、狐はこっくりと頷いた。
首を吊る瞬間まで、狐がじっと私を見上げていた。

しかし気が付いたら朝で、病院にいた。
足に少し火傷をしていたが生きている・・・。
離れて暮らす祖母が病室にきて、家が火事になったと教えてくれた。

両親と兄は亡くなったが、数ヶ所を刃物で刺されていた。
父が無理心中を計ったとされているけど、私が家を出る時、3人は楽しそうに兄が合格したらハワイ旅行に行こうと話していたから、無理心中とは思えない。

確かに首を吊ったのに私は自宅の前に倒れていたらしい。
そして服に狐と思われる動物の毛がたくさんついていた。
今は大学に進学して祖母と二人で暮らしている。

今考えると、狐にしては大きかった気がする。
でも頷いたのは、私が死ぬ事を了承するって意味じゃなかったんだろうか。
今は幸せに生活しているから死ななくて良かったけど。

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