今年の夏のことだけれど、昼間しか通れない有料道路がある。
そこの料金所からちょっと行ったところのトイレがすごく空も開けてて、星を見るのに絶好の場所なんだ。
普通は入れないんだけれど、うちはその有料道路の途中から入っていく林道の奥に山持ってる関係で、鍵持ってるんだよね。
で、いつものように鍵を開けて車でそこに向かって、トイレの裏に車を停め、いつものよーに空を見てぼーっとしてた。
いつものよーに。
微妙に怖いのだけれど、その怖いと思う気持ちも自分の気持ちなんだと、『大丈夫、ここは怖いことなど無い場所だ』、と静かに独り言つぶやきながら、夜の闇に身を沈める。
そのうち、目が慣れてきて、半月の明かりで周りが見えるようになってくる。
至高の時間だ。
と、ぼーっとしてたら、突然、離れたところから「オイっ!!!」って声がする。
何だ!?と思って見てみたら、ちょっと離れたところの登山道の降り口に人影が二つ。
突然のことに恐ろしくなって、脱いでたズボンを右手に通し、全力で振り回しながら「キャーホホ-!!キャッホ!!キャッホ!!キャッホホホホホホホー!ウッキャホーーー!!」と威嚇した。
人影は道路をものすごい速さで道路を駆けて降りていった。
まさか、こんな夜中に人が居るわけも無く、また、背中が異常に膨らんだ、ちょっといびつな人影だった。
得体が知れない。
「車で降りて行って、途中でいきなり出てきたらどうしよう?」と思ったら恐ろしくなり、車の中でi-podを聞きながら明け方までガタガタし、明るくなってきたところで飛ぶように山を降りた。
数日後、地元で、「山で迷って降りてくるのが遅くなった登山の人が、駐車場で気持ちの悪い声で叫ぶ妖怪を見た」っていうウワサが広がってた。
でも、正直、妖怪扱いされただけでよかったと思う。
通報されるところだった。