命が危なかった時の話

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

怖い体験は何年経っても何故か鮮明に覚えていますよね。

では、私が一番怖かった体験を書かせてもらいます。

今から20年前の話です。
私は都内23区の西の方に住んでいました。
その地域にはとある有名な寺があるのですが、中学生の私は帰り道が同じ方向の友人と帰りその寺の前で少し話をしてから別々の方へと帰宅していました。
たまにその寺に入り敷地にあるベンチで話をしたりもしていました。

ある日テレビでその寺が特集されていました。
古井戸があると。
しかもその井戸にはなにやら不思議な力が宿っていると。

翌日にはすっかり忘れてしまっていたのですが、友人とベンチで散々お喋りして日も暮れてくる頃なので、そろそろ帰ろうという時にふと、そのテレビの事を思いだしました。
それを友人に話し、帰る前に少し見にいこうということになったのです。

私達がいつも喋っているベンチは明るくて開けた場所にあるのですが、その古井戸がある場所は、生い茂った木々に囲まれた暗い一本道を進み、途中墓に抜ける道があるのですが、そこの手前を曲がり、そのま真っ直ぐ地蔵が立ち並ぶ道を進むと、これまた古い祠?のような建物の少し前にありました。
普段は行かない奥まった場所にありました。

「あったー!」

その時はテレビで見た井戸を見つけて嬉しく思いました。
それと同時に井戸を覗く不安がこみあげてきました。

その井戸は姿見の井戸というらしく、覗いた人の姿をうつし、もしうつらなかったら何か災いがあるとか・・・そんな感じだったと思います。

うつらなかったらどうしよう・・・。
そう思いながらも井戸を覗きました。

井戸には転落防止の柵がついているのですが、薄暗い井戸の中しかもかなり深い所に水面が見えます。
柵ギリギリまで顔を近づけて必氏に目をこらして自分の顔を探しました。
ぼんやりとですが、なんとなく人らしき影が見えました。

あ、私だ。
あれは私だ。

左右に首をふったりして確認し、ホッとしました。
続いて友人が覗き込みます。

友人:「見えない・・・どうしよう。」

焦り出す友人。
私は友人に「暗いからよくみて。顔動かせば影が動くはずだよ」
なんて声をかけてたと思います。

時刻はわかりませんが、もう夕焼け空でした。

これ以上暗くなったら、もう見えないんじゃ・・・。
私が誘ってしまったせいで友人に災いがあったら嫌だな・・・。

・・・なんてことを、必氏に井戸を覗き込む友人を見ながら考えていました。

何気なくだったと思います。
私は友人から視線を外し後ろを振り向きました。

振り向いた瞬間心臓がギュッっとなりました。

古い祠の前にポツンと女の人が立っていたからです。
こちらに背を向けて祠に向かい拝んでいました。
人の気配もなかったので、突然視界に飛び込んできた女性にかなり動揺してしまいました。
しかも服が真っ赤でした。

秋頃だったと思うのですが、今考えればその女性は薄着だったと思います。
ワンピースだったか、セパレートだったかは思い出せないのですが、上下柄なしの真っ赤な服でした。

何というか・・・そういうセンスの人もいると思うのですが、私にはお寺の参拝で真っ赤な服を着て一人拝むその女性の後ろ姿が異様にうつりました。
しかも黒髪ロング・・・。

ありきたりな出で立ちでネタっぽく聞こえますが本当に真っ赤な服で真っ黒な長い髪でした。

しばらくその女性から目が離せませんでした。
すると女性が合わせていた両手をゆっくり下げました。
左手に何か光る物が見えました。

すぐそれが何かわかりました。

包丁でした。
包丁の刃先が見えました。

その時頭の中で、まだ女性に私達は認識されていない。
まだ気づかれていないそう思ったんです。
だから友人にゆっくり近づきなんとか刃物を女性に気づいてもらおうと服をひっぱり、「シー」というジェスチャーを取りながら目と顎で女性の存在を必氏に伝えました。

女性はこちらに背を向けたままぼーっと立ったまま動きません。

友人も現状を理解したのか、ただならぬ私の雰囲気に驚いたのか、あたふたとし始め、周りが見えていないかのように視線も定まらず元いた道を二人で静かに戻ろうとした時でした。

私が後ろを振り向き確認すると、女性が笑いながらこちらを見ていました。

その瞬間友人が叫びました。
私は恐怖で声が出せませんでした。

二人とも本気で走りました。
足が浮いてるようで、地面を蹴ってる気がしなかったのを覚えています。

女性は笑いながらゆっくりと私達を追いかけてきます。

私達はあまりの恐怖とその一本道の薄暗さから判断ミスをします。
左に曲がって真っ直ぐ走り暗がりを抜ければいつもの開けたベンチがある。
けど恐くて恐くて早く少しでも明るい場所に出たくて右のお墓の方へ行ってしまいました。

お墓の隅まで逃げて、罰当たりですが人様の墓石の後ろに二人で身を潜めました。
そこで本当に微かに聞こえるか聞こえないかくらいの声で耳元で友人と話ました。

友人:「あれ何。怖い」
私:「怖いどうしよう」

友人:「こっち来ないかな」
私:「私達がお墓の方に逃げるのは見えてると思う・・・」

そう言った後、私も友人も黙りました。

時間がない。
このままここにいても絶対に見つかる。
けど、もう1つの可能性もあると思いました。
その女性は私達を追っているのか?

私達が見たのは本当に包丁だったか?
もし包丁と見間違えたなら、そんなに恐れる必要もない。
逆に目が合い微笑まれたのに悲鳴など上げてしまって大変失礼。
さらにその女性は出口に向かってるだけで私達など追っておらず左に曲がり帰ったかもしれない。

それを確かめるためにも、その女性が今どこにいるのか・・・。

把握しなければ。
安心したい。

よかったいないよ!と言ってこのまま帰りたい。
そのためには、墓から顔を覗かせ全体を見渡さなければいけない。

友人に耳うちをしました。

私:「私が立ち上がり確認するからだからもしあの人がいたら、後ろの門に向かって走ろう。」

私達が隠れている場所から3メール程離れた所に閉まっている門がありました。
高さは私の首くらいの高さ。

私:「あの門から逃げよう。安全に外に出るにはそこから出るしかないと思う。」

友人は頷きました。
泣いてたと思います。
私は勇気を出して顔をゆっくり墓から覗かせました。

顔を半分出した時でした。
区画でいったらツーブロック先にいました。

真っ赤な女性。
キョロキョロしていました。

私達を探してるんだとすぐにわかりました。

気づかれていないその状況、動けば見つかる。
けど逃げなきゃ。
どうしよう。

そんな事が頭をグルグルと巡っていました。
けど次の瞬間女性と目が合いました。
またニャっと笑いました。

それを見て私は友人に「走って!」っと叫びました。

赤い女は墓を掻き分けるように真っ直ぐ向かって来ます。

私達は鞄を柵の外に投げて柵を掴みました。
友人が柵を越えるのに手間取っていたので思いきりお尻を持ち上げて柵の向こうに投げるように押しました。

すぐに私も柵を越えました。
着地などできず転がるように門の外へ出ました。

すぐ立ち上がり鞄を持って走り出すとすぐ後ろからガシャーンと音が響きました。
赤い女が腰を屈め柵を掴んで柵の隙間からこちらをずっと睨んでいました。

その後すぐに私達は寺の前にある区役所?のような所に逃げ込みました。

そこは昔学校として使われていたとか。
追ってきたらと思うと一階にいるのは恐くてすぐに二階に逃げました。

その窓からずっと外を見ていました。

辺りも暗くなってしまい、警察にいこうとも話したのですが、警察は家とは反対方向もしまた赤い女が現れたらと思うと怖くて怖くて私達は今日はもう早く帰ろうと解散しました。

後日学校に報告しました。
その後の学校対応は覚えていません。

あと、どうしてもその赤い女の顔が思い出せないんですよ。
あんなに何度も見たのに・・・。

人間にしか見えなかったけど違う何かだったのかな?とか考えたりもしましたが。
捕まってた命が危なかったという意味でこれが一番怖かった体験です。

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