わかりやすい恐怖体験をしたことはないのですが、絶対に心霊スポットには行かないと心に決めた出来事。
大学って食堂がいくつかあって、値段やメニュー、時間帯でなんとなくメンツが似通ってきますよね。
当時その曜日のその時間に食堂の一つで女子数人とお茶していると、同じようにお茶している男女混合グループとしょっちゅうはち会いました。
会話をすることはなかったですが、彼らは人数が多く華やかな部類だったのでそこでは目立っていました。
近くに座っていると会話も洩れ聞こえてきます。
夏休み前、彼らは海に行くようで、さらに海近くの心霊スポットで肝試しをしてくる的な話をしていました。
リーダー格の男の子が「俺は幽霊なんて信じない」と言い張り、一番大人し目の女の子が「私怖いから嫌だ」と言っていて、他の男女は煽ったりなだめたりで、なんだかんだ肝試しの方も楽しみにしているみたいでした。
彼らと面識のある人たちは、「お土産よろしく」だの「幽霊出たら心霊写真にとってこいよ」だの通りがかりに声をかけたりしていましたが、私たちは別に彼らと面識なかったので、聞こえてくる話で「いいなー私バイトー」とか、「免許取りに行くわー」「ごめんw彼氏と旅行するw」とか、「お土産いいなーあんた彼氏と旅行行くならお土産必須!」「え、ご当地お菓子で許されない?w」とか、のんきに自分たちの話のタネにしていました。
信じない派の男の子は強気で、多分グループ内に男を見せたい相手でもいたのでしょう。
ふんぞり返って「俺が返り討ちだ!」とか言ってるところが可愛いなあと私たちは話していました。
彼、イケメンだったので。
夏休みが終わって、平常通りの食堂、いつもの時間。
私たちは、休み明け初めて遭遇した彼らの人数が減っていて、しかもいつものようなにぎやかさがないことに思わず聞き耳を立ててしまいました。
近くに座っていてもあまり多くは聞き取れませんでしたが、「○○は~だし、××は駄目だ、会わせてもらえなかった。」「お前あの後~」「いや、俺は大丈夫だった。けど、写真が~」そんなような会話をぼそぼそと男の子たちが話し、女の子たちはみな一様に下を向いていました。
何かあったことくらいわかります。
いったい何がと思っていたところ、別のグループがにぎやかに入ってきました。
彼らと面識のある人たちです。
その人たちは彼らを見つけると手を挙げて「よー!旅行どうだったー?!」的な声をかけました。
すると彼らはみな体をこわばらせて、黙り込んでしまいました。
別グループの何人かは何か知っていたらしく、声をかけた子たちの袖を引いたりしていましたが、私たちはもう絶対旅行、それも心霊スポットでの肝試しで何かがあったのだと確信しました。
おそらく食堂にいた声の聞こえる範囲にいる人は、みんなそう確信したと思います。
「・・・なんかあったの?」と聞いた別グループの子に、彼らの一人が「ごめん、約束の写真、現像できない。見ない方がいいと思う」と返した。
約束の写真は、つまり心霊スポットの写真です。
当時はまだデジカメは高価で、ポケットカメラが主でした。
つまり撮った写真は現像しないと見れません。
にもかかわらず、見ない方がいいと彼らの一人は言い切りました。
信じない派のイケメン君は無言でした。
その場にいなかったうちの一人、一番大人し目だった彼女は、休みが明けても一度も学校に来ずに、そのまま退学されたそうです。
同じ授業をとっていた子から聞きました。
噂では精神を病んだ、と。
ほかにも休学していた子や、社交的だったのにあまり話さなくなった子もいたそうです。
私もそのあと自分の健康状態(腰痛の悪化。うら若き乙女だったというのにw)を理由に休学のち退学したので、その後の展開は知りません。
なので同じ学年(2回生だった)を爆発的に駆け巡った噂のうち、どれが本当かはわかりません。
確実なのは、彼らの旅行中に何かがあったこと、女の子が一人そのまま学校に戻らなかったということ、
幽霊なんて信じないと言っていた超強気の男子学生が、その話題を出すとかたくなに口を閉ざしていたということです。
何ひとつ詳しい話を知らないなりに、私が絶対に心霊スポットには行くまいと心に決めた十数年前の話です。