人を喰うために知恵をつける

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

同僚の話。

出張で東南アジアに行った時のことだ。
かなり山奥の村に滞在したのだが、道端にある奇妙な物が気になった。
鉄条網で作られた柵なのだが、高さが異様に低く、彼の膝下くらいなのだ。
現地の通訳に「これは何だ?」と聞くと、「鰐(ワニ)除けの柵だ」と答えられる。
こんな山奥に鰐(ワニ)が出るのか!?驚いていると、次のように教えてくれた。

歳を経て知恵を付けた鰐(ワニ)は、人間を好むようになる。
言い伝えでは、鰐(ワニ)たちは人が持つ知恵を欲するのだと言われている。

鰐(ワニ)はここから二時間ほど離れた川よりやってきて、道を通りがかる人を襲う。
人が通り過ぎると、後足で立ち上がり、背後から抱きつく。
前足で人を抱え込むと、そのまま二人羽織のようにして川へ帰るのだそうだ。

襲われた人が助けを求め叫ぶと、そのまま倒れてその人を下敷きにし、尻尾でぴょんぴょん跳ねて連れ去るのだとも聞く。

村人が早めに気がつけば、助かることもあるのだそうだ。
その時は、程度はひどいが怪我をするだけで済む。
そう言って、通訳は自分の腕をまくって見せた。
確かに、多くの大きな古傷が走っていた。

半信半疑で彼が見返すと、通訳は白い歯を見せてニッと笑った。

ブログランキング参加中!

鵺速では、以下のブログランキングに参加しています。

当サイトを気に入って頂けたり、体験談を読んでビビった時にポチってもらえるとサイト更新の励みになります!