『うつ病』を持った父の最後

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

私の父は『うつ病』を持った人でした。

私が結婚すると決まって両家が初めての顔合わせの料亭での食事会の時、何か楽しい話をしなければいけないと気張ってしまったのでしょう。
私は父が50歳の時の子供で、あまり裕福な環境ではなく食べ物には大変困る時代だったようです。

そんな時代の話をし始めてだんだん興奮して『うつ』になってしまったのでしょう。
笑いながら「あまりにもお腹がすいたので罠を張り猫を捕まえてそれを食べた」と言ったのです。
そんな話は聞いた事もありませんでしたし、あまりにも不謹慎なので・・・。

びっくりし、そしてあちらのご両親になんと思われるかと眩暈(めまい)がしました・・・。
父ははっとしたようにしばらく黙り手をブルブル震わせながら「む、娘を宜しく御願いいたします。御願いいたします」と言って席を外しました。

母も私も「お父さんたら変な冗談を言って・・申し訳ありません」と謝り続けました。

父がなかなか戻ってきません。
心配になり婚約者と共に探しに行きました。

父はネクタイで首を吊っていました。

本当ならば結婚など出来る状況ではありませんでしたが、お腹の中に子供がいたので式もあげず籍を入れ子供も産みました。

しかし、子供が父そっくりの顔をした男の子で・・・どうしてもその子を愛せません。

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