人間の剥製を作ることになった

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

狩猟をし、山菜を売り、剥製を作り、民芸品も作る。
本人によれば、山に寄生しているようなものだという。
とんでもない山奥に、そんな男がいた。

ずっと昔、遭難者の遺体を何体か、剥製の製作技術を生かして加工し、日持ちするようにしたことがあるという。

普通は医者がすべきことだが、遺体を山から搬出するのに数日かかるような辺境では、彼のような技術者にでも頼む他ない。
正式には、どこからの依頼だったか聞いたはずだが、泥酔していた俺の記憶は、あちこちで飛んでしまっている。

たいていは損傷箇所を修復し、人に見せられる状態まで復元し、簡単な防腐処理を施すだけだったが、時には例外もあった。

警察から、彼の手元に若い女性の遺体が届けられた時のことだ。
防腐処理の準備をしていると、遺体の父親が訪ねてきた。

遺体は実家まで持ち帰り、きちんとした葬式をした上で焼くことにしたと告げられ、間に合わせの防腐処理でなく、もっときちんと加工して欲しいと要求された。

「時間はいくらかかっても構わない・・・。」

綺麗な姿で家に帰したいという言葉には説得力があった。
要望を取り入れると、ほとんど剥製と変わらなくなる。
そのあたりで、妙だな、とは無論思った。

承諾し、生まれて初めての人間の剥製を手がけることになった。
うまくいかない部分もあったが、父親はその出来栄えに満足し、相当な額の謝礼を置き、遺体とともに帰った。

遺体の父親はその後、何度も訪ねてきた。
子供を失った親が、どうしても子供を焼く気になれず・・・といった理由で、ドライアイス漬けの遺体を持ち込むこともあった。
まずいことになったと気付いたのは、人間の剥製を、すでに何体か作ってからだった。

彼が手がけた剥製が、特殊な販売ルートで売買されていることも聞かされ、どうやって手に入れたか知れないような、若い女性の遺体ばかりが持ち込まれるようになった。

最後の依頼になった女性の遺体を持ち込んだ後、ある地方を大災害が襲い、その『父親』は、それきり来なくなった。
剥製は完成したが、引き取り手はないままだった。

彼は今も山で暮らしている。
無論、人間の剥製を依頼しに来る者はいない。

それでも彼は、人間の剥製を作りたくなることがあるのだという。

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