別人になってしまう

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

高校生の頃、友人がチャリで事故った。
チャリを飛ばしていると、どっかのおばさんが車の助手席のドアを不注意に開けて、それに激突したらしい。
友人は頭から道路に落ちて気絶した。
そのまま三日間意識不明に陥ったのだが、四日目に意識を取り戻した。

俺は絶対安静が解けた友人を見舞いに行った。
先に見舞っていた連中から、”アイツ様子が変だ”という話は聞いていたのだが・・・。

病室に入ると、友人はぱくぱくと夕食を食べていた。
俺の姿を見ても、誰だか分からないらしい。

俺:「おい、元気か?俺だよ、○○だ」

友人は箸を止め、まじまじと俺を見つめた。
そして、話し掛けようとする俺に手のひらを見せて目を閉じた。
しばらく何かを思い出しているようだったが、目を閉じたまましゃべりだした。

友人:「三ヶ月前、電車に乗って一緒に●トリップを見に行った」

俺はいきなり何を言い出すのかと思って驚いた。

友人:「ステージで元●●女優の××がポラロイドカメラを渡して」

友人は冷静に話しつづける。

友人:「○○(俺の名前)は一枚千円の写真を二枚買った」

すべて事実なのだが、なぜそんなことを言うのか訳が分からんかった。

友人:「一枚はピンぼけだったので、五百円にまけてもらった」

記憶喪失がどんなもんだか知らんが、友人はそれらしかった。
自分でもそう言った。
しかし、俺は勘で違うと思った。
うまく説明できないが、目の前の男は友人じゃなかった。
なぜなら、鳥肌が立ち、背すじがぞっとしたからだ。

俺の知り合いに親戚のおじさんも同じような感じになった人がいたらしい。
3年くらい前に、事故に遭ってから別人のよう。

歩き方も話し方も雰囲気も、以前とは全然違う。
ビックリしたのは、退院してしばらくして皆で集まった時。
御寿司をとった時、今まで大嫌いで食べれなかったイクラを平気な顔してつまんで食べたてたらしい。
いとこ(おじさんの子供)に会った時、「絶対、お父さんと違う・・・」と悲しそうに言ってたんだと。

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