おばさんは”それ”を喰った?

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺は現在小さいながら、安定した会社で働いてるんだけど、前の会社が倒産した後、就職がなかなか決まらず、つなぎでバイトすることにしたんだ。

ポスティングのバイトなんだけど、普通の家とかに配ったりするのではなく、雑居ビル(スナックとかキャバクラとかホストクラブが多い)を中心に出前のチラシを配るというものだった。

雑居ビルってのは、大抵非常階段と中の階段の2個ついてるビルが多く、廊下が長い。
イメージで言うと学校の配置を考えてもらうとわかると思うが、お店(教室)がずらーと並んでいて、階段が端と端にある感じを思い浮かべてくれるといいかと思う。

配り方はビルに入ると最初はエレベーターで最上階まで上がって、各階のお店にビラを配って、非常階段か中の階段で1階ずつ降りて、1階まで降りていくのを延々と繰り返す。

ポスティングするのは、お店が閉まってる朝9時ごろから昼の4時ごろまでなんだけど、昼過ぎて、暑くなってきたので汗だらだらで配っていた。

もちろん電気のついてるビルもあるんだが大概は薄暗いビルが多かった。

そんな中、○六ビルってのに入って配ってたんだが、9階から8階へ非常階段で降りたんだけど8階のドアが開かなかった。

こういうのはたまにあるから、戻って中の階段から降りようと思ったんだけど、下から
「がさがさ」という音が聞こえた。

階段って、真ん中の部分から下が見える形状の階段があるんだけど、そこから見ると、ソバージュというか、ごわごわした髪の毛のおばさんが何か下向いてがりがり音を立てながらなんかしてた。

こういう時は、マニュアルで「こんにちわ」と挨拶することになっていたので、俺が「こんにちわ」と言ったんだ。
すると、おばさんがすごい速さでこっちを振り向いた時に、俺の目に飛び込んだのは、子猫みたいな大きさの毛のついた塊にかぶりついてるおばさんだった。

やばい!と思って、逃げようとしたが、その前におばさんが走って下に逃げた。
おばさんが逃げると同時に、俺も上の階へ逃げた!

エレベーターまでダッシュで行って飛び乗り、1階を連打した。
すると4階で止まった。
”おばさん”がいたら殴ってでも逃げようと思ったが、普通の料理人みたいな人が乗ってきて助かった。

その日でバイトは辞めた。

俺の人生で怖い思いをしたのはこれだけなんだが、これからの人生で雑居ビルの非常階段を使うことは、2度とないと思う。

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