実体験。
小学生の時、8月初旬に学校へ登校し原爆に思いをはせるみたいなことをしていた。
通っていた小学校が原爆投下のあった県に在していたり、人道教育に力が入っていたりしたせいか、夏休み中にも関わらず基本的に全員参加。
参加しなかった子に対して、2学期から露骨に冷たくする教師もいた。
この原爆教育の日に登校した生徒たちは、はだしのゲンなどの映像作品を見せられ、感想を発表させられる。
映像作品自体後味の悪いものが多かった。
が、一番後味の悪い体験をしたのは小学一年生の時。
この時見せられた作品は「おこり地蔵」。
原爆投下時まで笑い地蔵として慕われていたお地蔵さんが、原爆投下により傷ついた女の子のために涙を流し、その涙で女の子の喉を潤そうとしたものの、女の子は死んでしまう。
するとお地蔵さんの顔は笑顔から怒り顔に変化してしまい、それ以降おこり地蔵と呼ばれるようになった。
こんなストーリーのアニメを見せられた。
この「おこり地蔵」を見た後、担任は生徒を指名し感想を求めた。
すると、ほとんどの生徒の感想が「お地蔵さんが涙を流したので、不思議だと思った」とか、「お地蔵さんの顔が変わったのが不思議」といった内容になった。
担任としては「女の子が可哀想」的な感想を求めていたのだろう。
そして戦争の悲惨さとか原爆について話を広げたかったのだろう。
今なら担任の意図も分かるが、小学一年生にそれを察しろというのは少々酷だ。
発表のたび、担任がイライラをためていくのが分かったが、私たちは担任の意図など分かっていないので困惑するばかり。
やがて私が指名された。
私もお地蔵さんについて発表するつもりだったが、その関連の感想は出つくしていたので、何の気なしに「女の子が死んだのが可哀想」と発表した。
すると担任は急に「そのとおりです」と声を上げ、「私さん以外はお地蔵さんの話ばかりで、本当に人としての心がありませんでした。普通の人なら、まず死んだ方に心が向くはずですよ」と続けた。
そこからは私以外の生徒がどれだけダメか・・・みたいな説教が時間いっぱい続けられた。
その間なぜか私は立たされっぱなしな上、生徒たちの中には泣き出す子もいて、非常に居心地の悪い思いをした。
さらに2学期からは私に対する露骨なひいきが始まり、本当に後味の悪い一年となってしまった。
今考えれば「おこり地蔵」は女の子の死ではなく、お地蔵さんの表情の変化の方が印象的な作品であるし、原爆について知識のない小学一年生に何の説明もなく見せれば、お地蔵さんに対して意見が集中するのは当たり前だと思う。
また自分が思ったとおりに動かなかったからといって、生徒に対して露骨に冷たくなる教師もどうなんだろうか。
さらに後々、私の通っていた小学校近辺にいわゆる部落があり、そのせいで人道教育に異常に力が入っていた事実を知り、これもひっくるめて未だに後味が悪い。