A子は終電に乗ったが、睡魔に負けてしまい気がつくと山奥の終着駅。
あわてて起きたものの駅周辺には何もなく、ほかの乗客が乗ってしまったのか、タクシーすら1台も止まっていなかった。
そんなA子に気付いて車が1台近づいてきて運転手の男が最寄り駅まで送ってあげようという。
一度は警戒したが、朝まで時間を潰せるような店はなくこんなところで何時間も独りでいるほうが危険だと思い、結局は男の車に乗った。(確か、この話は携帯電話が普及する前の体験談)
行き先を告げると、最初はその方面に向かっていたが、途中で男に「自宅のものが心配するから、一度自宅に寄りたい」といわれ山を上る道へと方向転換された。
道はどんどん細くなり、周囲は森と言ってもいいほど木々ばかり。
それだけでも怖いのに男の言う自宅に着くと驚くほど古く、隣家もない。
A子は怯えてしまい、車が止まったらいつでも逃げられるように身構えた。
男は自宅前に車を横付けして降りた。
自宅に入っていくと、中から女の声がする。
「何だ、考えすぎちゃった」とA子は警戒を解き、会話を聞くともなく聞いていた。
どうも、男性が女性にA子の存在を伝えているようだ。
中にいる女の声は甲高く、妙に明るい。
女性:「あら、女の子を連れてきたのね!」
女性:「だったら私は帰っていいのよね!」
女性:「私、ここでのことは何も言わないよ!」
そのうち、調子の外れた女の歌声がし始めた。
A子はその声に胸騒ぎを覚え、車を出て家に近づく。
内部では、運転手の男が女に無言で暴力をふるっていた。
女はこれまでにもひどい暴力を受け続けていたのか、顔かたちは原形を留めておらず、男の暴力を歌いながら受け続けていた。
A子は脱兎のごとく走った。
学生時代に体育系の部活に所属していたし、周囲の木々がいい目隠しになってくれたので何とか逃げおおせた。
その後、この夜の出来事は通報していないし、近くに行くこともなかった。
私のつたない文章では無理だが、コピペの語り口から狂った様子が静かに伝わるし、語られはしなかったが、A子が逃げたことで生まれたであろう女の絶望が何とも痛ましい。