殺人犯になる前の人

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

もう20年も前の事なので書く。

私は両親の仕事の都合で、よく祖父母の家に預けられていた。
田んぼを挟んで家がぽつぽつあって、トイレは外の納屋にある程の田舎だった。
その田んぼを挟んだ向かいの家は、夫がアル中で酔うと暴れて手のつけられない人だった。

実際に祖父母の車を壊された事もあったし、夜中に奥さんが子供を連れて祖父母の家まで避難してくる事もあった。

ある日私が祖父母の家の下で遊んでいた時、向かいの家に奥さんがいるのが見えた。
目は虚ろで、何かブツブツ呟きながらウロウロ歩いていた。
その様子が余りにも異様で怖くて私は家に駆け戻った。

その日の晩、夜中にトイレに行きたくなって祖母を起こした。
外の納屋に行くために玄関の明かりを点けて外に出ると、玄関の前で奥さんと子供がガタガタ震えて座っていた。

奥さんは手にベルトを持って、またブツブツ呟いていた。
驚いた祖母の悲鳴と私の泣き声で、祖父や叔父さんも起きてきて大騒ぎになった。

向かいの家の奥さんは、旦那さんをベルトで絞め殺していた。

当時は何も訳が分からなかったけど、今思うとお昼に見た奥さんの様子を誰かに言っておけば良かったと後悔する。

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