狂った人間の行動

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

中学生の時、夏休みに親戚の家に遊びに行く事になり、家族で隣の県に住む彼らの家まで車で出かけた。

向こうには歳が近い親戚の兄ちゃんが一人いるんだけど、到着した日には何かの用事で出ていていなかった。

仕方ないので一人で遊ぼうと、親戚の家の裏手がちょうど小さな山というか藪の森?みたいになっていたので、そこを探検しに行く事にした。

頂上目指して坂道を登っていると、今歩いている割と舗装されている道から外れた森の斜面にぼろぼろの廃屋があった。

面白いもん見っけ、とわくわくしながら中を覗いたら、訳の分からない光景が広がっていた。

腐った床の上にまだ綺麗なパイプ椅子が円形に10個ほど並べられていて、その椅子の前には、商業施設内などでよく見かける厚紙で作られた等身大の芸能人の「パネル」が一個ずつ置かれていた。

野球選手のパネルもあったし、女優のパネルもあった。
アニメのキャラクターのパネルなんかもあった。

それらが、椅子を囲んでまるで会話しているかのように並べられていた。

朽ち果てたの廃屋と真新しい椅子やパネルとの異様なコントラストが物凄く気持ち悪く思えて、もう帰ろうと急いで小屋を出た時、自分が登って来たのとは逆側の、下の方の藪が不自然に動いている事に気付いた。

一瞬芸能人のパネルがひとりでに藪の中を動いている様に見えて焦ったが、よく見るとそれは、パネルを前に抱き抱えるようにしてよろよろと藪の道を登って来る人間だった。

顔は、大きなパネルに隠れて見えなかった。

後はもう一目散に山を駆け降りた。
あまりにも意味不明すぎて当時誰にもこの話は出来なかった。

最後に見たあの人影は明らかに普通の人間のように思えた。

どういう心理であんな事をし続けていたのか、今でもよく分からないし、あんまり考えたくない。

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