親切心をあざ笑う

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

以前、都内の某外資系企業に勤めていた男性の友人が体験した出来事です。

その日は、決算間近という事でほぼすべての部署が残業している状態で特に彼(A)の所属する課は残業が延びに延び、オフィスを出るのが午後11時を過ぎていました。

その日で大方仕事も一区切りつき、帰宅する方向が比較的一緒な課長のおごりでAと課長は二人で飲んで時間も時間だという事で駅で別れると、Aは終電間際の列車に乗って最寄の駅から自宅までをほろ酔い気分で歩いて帰っている時にその出来事は起きました。

お酒で火照った体に夜風が心地よい静かな夜だったそうです。

自宅までは駅から10分弱程の道のりでしたが、お酒を飲みすぎたせいかAはトレイに行きたくなり、若干遠回りになるものの普段は通らない道をとおり公園のトイレに足を向けました。

Aが公園に足を踏み入れようとすると、なにやら女性のくぐもったすすり泣くような声が聞こえてきます。

その公園はトイレから少し離れた所にベンチが並んでいる公園で、Aはそのベンチに腰をかけて両手で顔を覆い、なにやら泣いているような女性がいるのに気づきました。

Aは気になりながらも用を足すのが先と、トイレに駆け込み用をすませたのでした。

ふと一息つきながら手を洗いハンカチで手を拭いていると、どうやらまだそのすすり泣くような女性の声が聞こえてきます。。

トイレから出てベンチのほうを見ると案の定女性のような人間は下を向き、顔を手で覆いながらすすり泣いています。

ひじから手先までをやけにぴんと張りながら泣いている姿に違和感を覚えながらも、普段はそんな人間がいても気にしないAでしたが、周りには誰もいなく時間が時間だけに声をかけてみることにしたのでした。

A:「あの・・・・・・どうかされましたか?」

声をかけてみるものの返事がありません。

今度は正面から近づき・・・「大丈夫・・・ですか?」

再度声をかけたまさにその瞬間、女性は腕で見えないように隠し持っていた鋭利なキリを構えるとAに向かって直線的な動きで突き刺そうと立ち上がり「・・・チェストォオオオオオオオオ!!」と叫びながら襲い掛かってきました。

空手の心得があったAは無意識のうちに体裁きの体制に入り間一髪で女の一撃を交わすのに成功したのでした。

その後は後ろを振り返らず一心不乱に逃げ帰ったそうです。

翌朝、通り魔事件の新聞記事を目にしたAは、声をかけ近づいたAを刺そうと顔を上げた女性の顔が満面の笑みでゆがんでいたのを思い出したそうです。

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