今から十数年前。
まだ未来あるガキだったある日。
家族で晩飯食ってると玄関先でニャ~ニャ~と鳴き声が聞こえた。
「あ~ネコや!」と自然とテンションが上がったが、当時は礼儀、行儀作法が厳しかったため大人しくそのまま飯を食ってた。
気づけばいつの間にか鳴き声も止み、そろそろ寝る時間って時にまたニャ~ニャ~と聞こえたので、今度は少しだけと言って玄関先に出てみた。
小雨が降る中いくら目を凝らしても声は聞こえるが姿は見えない。
どこにいてるんかな?とジッとしゃがんで耳を澄ますと、玄関横の軒下から声が聞こえる。
どれだけ待っても出てこないんで、試しにと冷蔵庫の牛乳をお皿に注ぎ、玄関前に置いて一歩下がって待ってみた。
すると最初は警戒しながら出てきたが一度お皿に口をつけると、驚くぐらいの勢いで牛乳を飲んでる。
カワイイなと思いながらよく見ると寒さのせいか小刻みに震えてるし、身体も生まれて間もない感じ。
小さくて「コイツこのままじゃ死んじゃうんじゃ・・」と思いダメ元で親に頼みどうにかこうにか飼うことを許してもらえた。
今まで動物を飼ったことがなかったが元々動物は大好きだったんで、毎日が新鮮だった。
飯とトイレは家の中でするようしつけ、外に出れるよう俺の部屋の窓を少しだけ開けていた。
で、朝起きると俺の布団の中にいつの間にか入って寝てる毎日。
それから数年経ったある日。
その週は家族は週末まで帰って来ず俺とチャオ(ネコの名前)だけなんで、豪勢にピザやモンプチなどを食った。
翌日起きて布団の中を覗くと珍しくチャオがいない。
カギをかけたか?と思い確かめると窓は開いている。
今までも帰って来てないことがあったんで気にせず学校に行き、家に帰って来ると飯は手付かずのまま帰って来た気配がない。
ノラ猫が何匹かいるんでケンカしてどっかで休んでいるんか、それともどこか遠くまで遠征に行ってるのか帰って来ない日が2日続いた。
もしや車に轢かれたかと不安になり、なかなか寝付けず遅くまで起きてた3日目の朝、ニャオ~と鳴く声に目が覚めた。
俺は安心し外もまだ暗かったため、布団をめくり「おいで」と言ったが、その時はなぜは鳴くばかりで入って来る気配がない。
眠たさに負け、気にせず一人で寝ようとすると、珍しく止むことなくニャ~ニャ~と鳴き続ける。
近所の手前ほっとくこともできず、腹でも空いてるのかと思い飯をやろうとしたら缶詰がない。
しかたなく外に連れ出しそのままコンビニに缶詰を買いに行き、戻ろうとした時地面が激しく揺れた。
阪神大震災だった。
幸か不幸か我が家は半壊で俺もコケた時の擦り傷程度、あのまま寝てれば死んでなくてもケガはしてそうな状況だった。
その時はラッキー助かったと思う程度だっだが、今振り返ってみてもやはり偶然だと思う。
ただ家系のせいか昔から信心深く、良い意味でも悪い意味でも自然と結びつけてしまうところがあるが、チャオには感謝してるし、チャオは予期してたんだと思う。
恩返しのつもりだったのかもしれない。
あんなに鳴いたのは一緒に過ごした6年のうちあの時だけ。
それから数年後、ノラ猫とのケンカが元で病気になり死んでしまったが、毎年1月になるとせつなく思い出してしまう。