昔テレビで観た、東山動物園のゴリラショーの飼育員の話。
昭和30年頃、東山動物園にゴリラの赤ちゃんがやってきた。
担当の飼育員は親代わりとしてゴリラを世話し、四六時中一緒に過ごした。
ゴリラはプライドの高い動物で、芸を仕込むのは無理だと思われていたが、飼育員の献身的な努力の結果ついに芸を仕込むことに成功し、世界初のゴリラショーは人気を博した。
そんなある日、今まで飼育員に従っていたゴリラのうち一匹が、飼育員を突き飛ばし大怪我を負わせた。
赤ちゃんの頃と違い、成長して体重100キロを超えたゴリラには人間の力では対抗できなくなっていた。
この瞬間、ゴリラ達の間でこれまで『ボス』としていた飼育員との立場が逆転し、ゴリラは飼育員の言うことを聞かなくなり、ショーを続けることができなくなった。
野生の本能だから仕方ないとは言え、していたゴリラに、裏切られた気持ちにならなかっただろうかとか、飼育員さんを信頼して言うことを聞いているように見えたゴリラが、虎視眈々とボスの座を奪うチャンスを窺っていたのかな、とか考えると悲しかった。