説明がつかない怖さを持つ人間

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

幼馴染(俺もそいつも男ね)が関東へ進学し2年くらい経った頃。

そいつの母親に「うちの子がどうも大学へ行ってないらしい。連絡してこなくなったし、遊びに行くついでに様子を見てきてもらえないか」と頼まれた。

以前も幼馴染のアパートへ遊びに行ったことはあったし、暇なので快諾。
新幹線乗って幼馴染のアパートをピンポンした。

出てきたのは知らない中年男だった。
アパートの表札は幼馴染の名前なので部屋間違いではない。
「シュウ(仮名)くんいますか?」と聞くと中年男は「今いないよ」と言う。

しかし、部屋の中から幼馴染の声がした・・・ような気がした。

俺はこの時、幼馴染に名前を呼ばれたと思ったんだが、あとで聞いたところによると、本人曰く「ああ」とか「うう」みたいな音を発しただけだったらしい。

中年男が弱そうなガリチビだったせいもあって、俺は強気に「いますよねー?」とドアを無理やり開けた。

入ってすぐの流し台の横あたりに幼馴染が体育座りしていた。
痩せてるってほど痩せてなかったし、顔色が悪いってほどでもなかったのに、なぜか人相が変わったほどやつれて見えた。

何かおかしいと思ったので強引に入って、幼馴染に「この人誰?」と中年男のことを聞いた。

「友達」と言うが、どう見ても俺達より15歳くらい上で友達になるような人じゃない。

とにかく幼馴染と二人で話したかったが中年男がどかないので、幼馴染を外へ出して、近くのアイスクリーム屋みたいな店で話した。

幼馴染はずっと「帰らないと帰らないと」と言っていた。

様子がおかしかったのでその場で幼馴染の親に連絡。
わけがわからないながらも、幼馴染の母親が「連れて帰ってきてくれ、旅費は今すぐ振り込む」と言うから、振込が俺の口座に入金されるまで1時間くらい待って切符買って二人で帰った。

幼馴染は途中から「帰らないと」と言わなくなってぼーっとしていた。

後から知ったんだが、幼馴染とあの中年男は趣味のサイトを通じてネットで知り合った相手で、2回くらい飲んだら「泊めてくれ」と言われ、そのまま居座られてしまったらしい。

幼馴染が言うには最初はすごく楽しい相手だったとのこと。
楽しくて何日でもいていいよ!と最初は思っていた。

しかし、いつの間にか相手が高圧的になって、幼馴染が言うことを聞く立場になっていて「大学へ行くな」「電話に出るな」と命令され、金を貸してくれと言われたら貸し、意味もなく時々ビンタされたりしていた。

驚いて「あんなヒョロガリ、殴り返せば勝てるだろ」と言ったが「怖くてできなかった」と幼馴染。

幼馴染の方が背が高くてガタイがいいのになぜ?と不思議だがとにかく怖かったらしい。

結局幼馴染が落ち着くまでこっちにいて大学には休学の連絡か何か入れて、秋になってアパートを見に行ったら中年男はすでにいなかった。

でもいつ戻ってくるかわからないので大急ぎで引越しさせた。

あれから大分経つが幼馴染はあの中年男に以後遭遇していないらしい。

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