夜釣りでの不審者

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

7年くらい前の出来事をひとつ。

9月くらいだっただろうか、その時は友人とアオリイカ狙いで夜釣りに来ていたんだ。
場所は自宅から車で2時間程の小さな田舎の漁港。
釣りのポイントはその漁港の中でも一番大きな防波堤で、陸地側から少しづつ先端近くに歩きながらという感じだった。
風もまったくと言っていいほど無く最高のコンディション。

二人とも久々の釣りで新品の買ったばかりのエギ(ルアーみたいなもの)を見せ合ったり、過去に一緒に行った釣りの話で凄く盛り上がりながら釣りをしていたんだ。
他に釣り人は居ないし結構騒がしい感じだったと思う。
そして防波堤の中腹くらいに来た時には、お互い型は小さいけど5匹くらいをクーラーの中に入れて満足してた。

そんな時に友人が「あそこに人居るよな?何してんだろアレ??」と。
俺は言われてアゴでしゃくられた方向を見てみると確かに人が居た。
防波堤の入り口から少し入った辺りで一人こっちを見てた。
「釣りにきたんじゃね?」と俺が言ったが「いや、30分くらい前に気付いたんだけど竿も持ってないみたいだし、ずっとあそこに突っ立ってんだよね」との事。

立ち入り禁止でも、釣り禁止でもない防波堤なのでお互い自然と「まあ、よく分からんがとりあえずほっといて釣りを続けよう」という事になった。
その後も騒ぎながら数匹を追加し、潮も止まったみたいなのでその場に座り込んで雑談してたんだ。

そしたらまた友人が「あれ?人増えてね??」と言うので俺も当然の様に入り口の方を見てみる。
そしたら確かに3人に増えてた、おまけにこっちに歩いて来てる。

「こっちに歩いて来てるな、しかも何か持ってね?」と言われよくよく見てみると、どうやら台車みたいなものを押して歩いてるのが確認出来た。

「何アレ?漁師さんか??」と俺が言ってみるものの、友人は「こっちに船無いし、意味不明」と言ってゲラゲラ笑っている始末。
確かに意味不明・・でもちょっとうるさいわお前、と思いながらも自然とその謎の3人を観察してみる事に。

3人が近づくにつれ、風体もよく見えるようになってきた。
一人は30代くらいのオッサンで、パーカーかなんかとジーンズ。
残りの二人は俺らと同じくらいの20代半ば、スウェットみたいなのと黒いジャケット羽織った奴。
それで台車の上には段ボールが何個かでスウェットの奴が押してる。
多分最初に見てたのもこのスウェットの奴っぽかった。

この頃にはこっちもお互いに、これはまともな連中じゃないってのを悟り黙ってその3人を見てた。
防波堤だし、どこにも逃げ場は無いのでとにかく向こうの動向を見てるしかなかった。
それで向こうとの距離が10m程になった時に気付くが向こうの若い奴二人はこっちをガン見状態で
オッサンはヘッドフォンで音楽でも聴いてる風だった。

もちろん俺らも3人をガン見状態・・・。
んですれ違う瞬間は完全にお互い威嚇状態・・・。

その時気付いたんだが、オッサンのヘッドフォンから音が結構漏れてる・・・。
70年代風の日本の歌謡曲みたいな感じだったけど、歌詞が明らかに日本語じゃない。
修学旅行の時に行かされた半島の方の言葉だったと思う。

そして運よく向こうの連中が脇を通り過ぎ(それでも若い奴二人は歩きながらもまだこっちをガン見)何事も無く良かったと思いつつも眼を逸らせないでいると、どうやら先端にあるテトラの方に降りていく模様・・・。

段ボールみたいなのをテトラに上って海の方に運んでいる?
もう連中との距離も広がって緊張が解けたのか友人に「撤収!!」といきなり言われて俺もやっと我に帰る。
もうさっさとこの場所から退きたいので「了解!!」と言ってさっさと車まで戻る事に。
そして陸地側に歩き始めて直ぐに、先端の方からブオオォー!!というエンジン音。
あぁ、多分あそこに船があったんだな・・と思いつつ、かなり危なかったんじゃねコレ??と実感する。

友人は「工作船ぱねえ!!まじこえー!!」とか叫んでる始末。

「あんまり叫ぶな、戻ってきたら洒落にならんぞ」と言ってなだめ、さっさと車に戻って無事帰還しました

翌日、TVでは昨日行った漁港の付近で不審船が目撃されたと報道されていました。
夕刊でも同様の記事が一面に・・・。

今思い出してもホントにアレは洒落にならんとつくづく思う。
もし釣果が悪ければ、連中が歩き出す前に先端に到達して船見つけてしまったのかな?
もし船見ちゃってたらどうなってたんだろうか・・・とか色々想像してしまう。

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