昔、うちの近所に通称『車椅子のじじい』といわれる爺さんがいた。
この爺さん、足が不自由なせいで性格がひねくれて、ことあるごとに、道路に寝転んでバス止めたり、店の玄関前に座り込んで営業妨害をするのが日課だった。
友人なんかは駅前のゲーセンでバイトしてて、何度となく嫌がらせされて辟易してた。
自分もその現場は見てたし、道路に寝そべって、警官に注意されてる姿を何度も見てた。
ある日新聞を見ると『車イスのおじいさん、電車に轢かれる』の記事が載っていた。
厄介者が死んだので、みんな大喜び。
うちの家族もみんな喜んでたし、例の友人なんかは、まさに大歓喜。
まあ、ここまでは普通の話なんだけど、こっから先が後味の悪い話になる。
数ヶ月して、新聞にある投書が載った。
あの爺さんが、電車に轢かれた記事を読んだ小学生の投書だった。
『あのかわいそうなおじいさんは、きっと、自分身体の不自由さに耐え切れず自殺したんでしょうね。そう考えるとかわいそうでなりません』
いや・・・ただ、いやがらせで、電車止めようとしただけだから・・・。
駅すぐ横の踏み切りだったんで、普段なら電車は停止できたんだけど、それがたまたま急行だったもんで、そのまま轢いちゃっただけ・・・。
掲載された新聞は、読売新聞。
東京版じゃないと載ってないかもしれない。
30年くらい前だったかな・・・。