末期癌だが鎮痛剤を断る理由

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

終末期患者の緩和病棟の医師のAさんの話。

そこは基本的に治療そのものより、如何に患者さんの残り時間を苦痛無く、穏やかに過ごさせるかが大事だった。

そういう患者さんの中に、初老男性のBさんが居てもう末期癌で、残り時間も少なく、また苦痛も激しかったが苦痛は、強力な鎮痛剤を点滴で入れればかなり緩和される筈なので、A医師はそれを薦めた。

しかし、Bさんは意固地というか、変わった性格で人の話を聞かないところもあり、それが原因で息子さん兄弟とも疎遠になってしまっていた。

もう末期であり長くない事を、病院側がいくら説明しても息子さん達は「関係無い、勝手に死ねw」で埒があかない状態。
鎮痛剤の使用は、確かにそれで苦痛も軽減されるが、麻薬?なので、使用後は意識朦朧の
状態で過ごす事となり「寝ている状態で何をされるか判ったもんじゃない」と、Bさんは、のたうち回りながらも、頑なに鎮痛剤使用を拒否し続けた。

Bさんの苦痛は尋常じゃなく、その腹癒せなのか、無理難題を看護師達にふっかけるので、
かなりのトラブルメーカーだったらしい。

そんな中、このままだと痛みのあまり、残りの寿命を縮める可能性があると思ったA医師がとうとう自分の判断で、Bさんに鎮痛剤を使用して昏睡状態にした。

ところが、その直後、なんと件の息子兄弟とその家族が、面会に訪れたが、その時には既にBさんは何も判らない状態だった。
息子さん達も、最後ぐらい和解して初見の孫を合わせてあげようと思ったらしい。

もしかしたらBさんが、頑なに鎮痛剤使用を拒んでいたのは、こうやって、最後には息子達との和解を期待していた為かも知れない。

患者本人が拒否していたのに、A医師の鎮痛剤使用はかなり微妙なライン(違法と裁量の狭間?)だったし、もしA医師が処方しなかったら、Bさんは苦しみながらも家族との再会を果せただろうに結局、Bさんは数日後に何も判らないまま亡くなられたそうだ。

そりゃ、大元はBさんの性格が元凶だけど、誰も悪気が無かったのに、すべてがボタンの掛け違いみたいな結果に、何とも言えない気持ちになった。

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