胃袋を切り裂いてみると

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

札幌丘珠事件。

明治11年のある冬。
札幌郊外の山中で、猟師が冬眠中のクマを見つけ、狩ろうとするが失敗。
理不尽に冬眠からたたき起こされたクマは逆上して猟師を返り討ちにし、空腹のまま市街地を駆け抜けた。

札幌警察署は駆除隊を編成しクマを追跡するが、猛吹雪によって見失ってしまう。

駆除隊の追跡を振り切ったクマは丘珠村にたどり着き、人家を襲った。

人家といっても開拓民の暮らす簡素な小屋で、クマの襲撃にはひとたまりもなかった。

クマはまず、異変に気付いて筵の戸を開けた男を昏倒させた。
家のなかにいた男の妻は、とっさに幼い長男を抱いて逃げようとしたが、頭に爪の一撃を食らい、子どもを取り落としてしまう。
妻は頭皮をはがされるほどの重傷を負いながらも村民に助けを求めたが、その間に男と長男はクマに食い殺されてしまった。

その翌日、クマは駆除隊によって射殺された。
射殺された後のクマの躯は、札幌農学校に運び込まれ、教授の指導のもと学生たちによって解剖されることになった。

解剖実習の最中、二、三人の学生が教授の目をぬすんでクマの肉を切り取り、休憩時間にこっそりと火であぶって、醤油をつけたりして食った。
「クマの肉はくさい、かたい」などと言いながら。

休憩時間が終わり、ふたたび解剖が始まったとき、ある学生がふくらんでいる大きな胃袋に目を付け、力任せに切り開いた。

中からは内容物がどろどろと流れ出した。

赤ん坊の頭巾や腕、女の髪。
学生はみな叫び声をあげて飛びのき、休憩時間にクマの肉を食らった学生たちは一散に屋外へ走り、のどに指を突っ込んでクマの肉を必死で吐き出したという。

この話で唯一後味のいい点は、夫と長男を一時に喪い、さらには重傷を負って長い入院を余儀なくされた妻を行政が不憫に思い、彼女が再婚するまで扶助していたというところ。

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