普通の殺人より怖い話

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

去年の秋、台風が来てたときのことだ。

うちはじいさんだけが田んぼで米作ってて父母は勤め人なんだが、夕飯が終わった9時ころにじいさんが「ちょっと田の様子見てくっか」って言い出した。

したら母親がカーテンから窓の外を見て「ああ、雨も止んできたし風もよくなってるね」って言ったんだ。

俺も見たらそんなことはなく、荒れ具合はますますひどくなってる気がした。
じいさんにそう伝えようとしたが、母親に呼び止められた。

すると今度は父親が「さすが、昔からの農業人は鍛えかたが違うねえ」と、こう言ったのを聞いて、じいさんは雨合羽を着て出ていったんだ。
そして帰ってこなかったんだよ。

朝方になって父母が警察に連絡し、田んぼの近辺を捜索したが見つからず。
3か月後に農業用水の堰からつながる川の上流の橋げたにひっかかって発見され溺死ってことになった。

今年になって田んぼを売り、父親は新車を買ったんだよ。

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