寒い季節を思い出したくない

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

季節外れですが子供の頃の体験談を。
フェイク有り。

私は子供の頃は物を欲しがらない子でした。
新品の服を欲しがることもなく、服は姉のお下がりの古着ばかり着ていました。
両親は私のことを「金がかからないから助かる」と評価していたそうです。

長年の間、私の部屋には暖房器具がありませんでした。
なので私は夜寝る時に暖をとるために布団乾燥機を部屋に持ち込んでいました。

しかし、母は布団乾燥機の音を聞きつけると私の部屋に入ってきて布団乾燥機を無理矢理奪っい取っていきました。
理由は電気代がかかるからだそうです。
これが何度あったか覚えていません。

私は布団乾燥機を奪われる度に寒い寒いと泣きながら母に懇願しました。
母は聞く耳持たず何の対策も施してくれませんでした。
どうかしてると思います。

私は毎日凍えながら布団にくるまって夜を過ごしていました。
たぶん慢性的に寝不足だったと思います。
布団がタオルケット一枚だけだった年もありました。
私もどうかしていたのか、布団が無いことを両親に言ってませんでした。

でもある年の冬にとうとう父が私に暖房器具を買ってきてくれました。
しかもそれは高値そうに見える暖房器具でした。(しかし今思うと安物だったと思います)

でも私は物を欲しがらないというか、長年お下がりで育ってきたからなのか、いきなり高価そうな物を与えられると申し訳無く思って気が引ける性格だったので、素直に喜べませんでした。(悪く言えばひねくれていた)

私は「こんな(高そうな)のは欲しくなかった。買ってくれるのなら一言相談してほしかった」とゴネました。

すると私の姉が「じゃあ私がその暖房器具を貰う」と名乗り出ました。
私はそれに納得いかずに「やっぱり自分が欲しい」と主張を変えました。

姉の部屋には既に暖房器具があるし、部屋も姉の部屋の方が私の部屋より優れています。
というか私はいらないとは一言も言ってない。
姉も暖房器具を狙って一歩も引かず、私と口論になりました。

いくら言っても話が通じないので、私はつい姉に手を出してしまいました。

素手で殴るのに抵抗があったので、鍋蓋の面の部分で殴りました。
それを見た母は怒り狂い、出て行け!と叫びながら私を掴んで家の外に勢い良く放り投げました。

外は雪が積もっていて、除雪された路面は凍り付いていました。
私はその凍り付いた路面に顔面から落ちました。
血が出ました。

私は裸足で、しかも服は夏用のジャージでした。
でももう家に帰りたくありませんでした。

私は冬の夜の中を裸足で迷い歩いて、この寒さから逃れる方法を探しました。
ダンボールを手に入れ、農家の納屋やバス停の中でダンボールにくるまって、足の裏を必死に暖めながら眠ろうとしました。

寒くてロクに眠れませんでした。
意識が無くなったと思ったら、またすぐに寒さで目が覚めるんです。
その繰り返しでした。

夢か幻聴かわかりませんが、変な声で目が覚めたりもしました。
私は最後には橋の下に移動しました。

私は幼い頃から姉から「お前は橋の下に捨てられていて拾われてきた」と言われて虐められていました。

その事を思い出し、橋の下にいれば本当の母が迎えに来てくれるんじゃないかと思いました。

橋の下は納屋やバス停より寒かったですが、本当の母が迎えにきてくれることを想像しながらだと不思議と長く眠ることができました。

たぶん朝の四時か五時頃に完全に目が覚めました。
そこからは眠らずに日の出を待ち続けました。

ナチュラルハイというものなのか、それとも泣き疲れたからなのか、日の出を見たらテンションが上がってきて、家に帰れるような気がしました。

その頃には何故か寒さを感じなくなってました。
家に帰ると、姉からこう言われました。

「お前の人に心配をかけようとする手法は~(以下、解読不能)」

おそらく姉は私が家に帰らなかった理由を「両親に心配をかけたかったから」だと思ってるみたいでした。

改めて吐き気がしました。

ちなみに暖房器具はちゃんと私の物になりました。
凍傷にはなりませんでしたし、風邪も引きませんでした。
おわりです。

書き忘れたので追記しますが、あの夜は父は家にいませんでした。
私が家から放り出されたのは午後七時頃です。

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