知り合いのお兄さんがずっと医療施設に入所していて、全身不随、目覚めているが意識はなく、ただ条件反射的に一日中テレビ画面の動きを目で追っている毎日で毎日、ご両親が面会に行っては付き添っているらしい。
私がその友人と知り合った頃からそういう状況だったので、私はお兄さんは生まれた時からそうか、もしくは不慮の事故でそうなったものだと思っていたけど、実はそのお兄さん、ほんの数年前までは全くの健康で、頭も良く進学高校でバリバリ勉強してクラブ活動もやる、ご両親自慢の息子さんでお兄さんだったとか。
ところが、ある時急に「頭が痛い」と言い出してぼんやりするようになって心配したご両親が医者に連れて行っても異常なし。
それでも毎日、なし崩しのように喋れなくなり、動けなくなり、夢と現実が混合して意味不明のうわ言を言うようになって、やっと大きな病院で診断が付いたそうだ。
病名までは判らないけど、何でも極幼い頃に麻疹だか風疹だかに罹っていたのにあまりに症状が軽く気がつかずにそのまま放置、ウイルスは身体深くに潜ったまま生き続けていて、ある日いきなり脳にきて増殖、一種の重篤な脳炎を発病したとか。
最初に症状が起きてから、今の状態になるまでに数日間の間で進行して、今はもう目を開けて物を見ていても、食べ物を口に入れると咀嚼もするが、意識としては何も認識出来ない状況らしい。
一度だけ、一時帰宅でいたらしい車椅子ベッド(?)にくくられた、そのお兄さんに会ったことがあるけど、正直、人間の尊厳を感じさせられる顔つきではなかった。
印象しかないから、後から友人から、元気な頃のお兄さんの写真を見せられた時に、すごいハンサムだったので後味悪かった思い出があるよ。