ゆっくりと言葉で復讐してやる

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

もう30年以上前の話だが、俺は小学校の時に担任の先生にいじめられていた。
勉強はできたわけじゃないし、生活態度もいい方ではなかっただろう。
それでも今考えれば常軌を逸したいじめであったことは間違いない。

つい先日、バスに乗っていたら車いすの女性が息子らしい人と乗ってきた。

よく見ればその女性は元担任の先生だった。
一気に記憶が甦った。

「車いすか、因果応報だな。俺のことを覚えているか?」
「名前は覚えていないが、教え子だったことはわかる」

「俺はあんたから受けた仕打ちは一生忘れないよ」
「何言っているの?」

「世が世なら教育委員会経由で教員資格はく奪されることをしていたことも覚えていないのか?」

俺は一つ一つ話して聞かせた。
「いきさつは覚えていないが、あんたに文句を言った時、K岡を呼んで俺を殴らせたよな。K岡くん。俺君を殴りなさいってよ。みんなが見ている前でな」
「そんなことやってないわよ」

「卒業してすぐのクラス会で、その話題になったじゃないか、あんたは笑って話に参加していたぞ」
「覚えてないわよ」

「U村がわけのわからなことで、俺に謝れって言ってきて、俺が拒んだときなんていったか覚えているか?やっていなくても謝るように言われたら謝らなきゃだめだって言ったろう。だったら先生が謝ればいいだろうと言ったら、先生は謝っちゃいけないんだと言ったよな」

「覚えてないわよ」
ヒステリックになりつつあった。

「田中角栄の記憶にないというのは卑怯だ。と言ったのはあんただよ。」

そこで息子が口をはさむ

「もうやめてください、母に代わって謝ります。」
「お前とは話していない。謝るならこいつだろう。違うのか?たとえ謝っても許される話じゃないことはお前もわかるだろう。」

周囲の客もおとなしくなっているのがわかった。
「運動会で隣のクラスのE藤が怪我した時に、俺が犯人だってみんなの前で言ったよな。俺は無関係なのに」
「だから覚えていないって」

「校長先生とその話合いになった事件じゃないか、あんたに席を外させて、犯人は俺じゃないって校長先生は言ってくれた話だぞ」

「大昔の話でしょ」

「買い物途中の俺の母親に俺が犯人だって白状したってデマまで言ったよな」
「そんなことしてないでしょ」

「あんたにとって軽い気持ちなんだろうけれど、俺にとっては大問題だ」
「昔の話ばかりされたって」

「あんたが先生という名を使って悪事をしていたのが昔の事だろう。誰だか忘れたが夏休みの課題で作ってきた粘土細工が壊れた時も俺を犯人に仕立てたよな。みんなの前でK岡に殴らせたよな。ここまで聞かせたって一言も謝ろうとしない。これが教育者のなれの果てかよ」

ここでバスは終点に到着、地元の人、特にお年寄りの利用の多いバスだから、あの先生の近所の人もいたはず。
俺は電車に乗り換えなければならなかったので「今度会ったら続きを聞かせてやるよ」と言ってバスを降りた。
まだ言い足りなかったな。

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