妹だけがその姿を見てしまったらしい

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

おはようございます。
コックリさんで怖い思いをした者です。

時は移り、短大の時にまた体験した話です。

高校で海外生活の楽しさに味をしめてしまったので、短大も留学プログラムのあるとこを狙い撃ちし、見事入学する事となりました。

2年生になる直前の春休み、私はシンガポールでの留学プログラムに参加する事ができました。

お世話になったのは留学先の学校で教師をしているパパ、他の学校で教師をしているママ、高校生と中学生の妹、住込のインド系お手伝いさんの女性という、堅い感じの家庭でした。

与えられたのは2階の階段脇の部屋。
夜は警報装置が稼働しているので、絶対に1階に降りてはいけないと言われました。

学校へはたまにパパと一緒に行く程度で、いつもは電車とバスを乗り継いで通っていました。

学校にも慣れ、妹が実はかなりのヤンチャだと知って急速に仲良くなった頃でした。

夜遅くまでバカ話で盛り上がってしまって、自分の部屋でガッツリと惰眠を貪っていました。

コンコン、と部屋のドアをノックされました。

起きてるか?とか言いながら、何度もノックしてきました。

パパの声でした。

こっちは眠くてたまらなかったので、いっそ寝てる事にしてやり過ごそうとか思ってたのだが、そのうちドアノブをガチャガチャやってきた。

その間も、起きてるかー?とかノックとか。

学校は休みのはずなのに、なんとも朝からアグレッシブ。

何か用があるのかなぁ。
つか、さすがに寝たふりは礼に欠くよなぁって思った。

起き上がってドアのトコまで行って、ドア越しに応えた。

すんません。
今起きました。
着替えたら下に降りますね。

って返したら、ノックとかも止んで、下に降りてく気配がした。
とりあえず適当に着替えて、部屋の鍵を開けて1階に降りてった。

1階に降りると、お手伝いさんが掃除をしていた。

あれ?パパは?
と聞くと、すでに出掛けたとの事。

早ぇなぁ。

さっきパパに起こされて、着替えて降りてきたのにって言ったら、お手伝いさんがギョッとした顔でこっちを見た。

「さっき?」
「うん、さっき。起きろー言われてノックされてさ、何か急ぎの用かなって思ったんだけど。」

「・・・ダンナ様はもう2時間前にお出掛けになりましたよ?」
「・・・じゃあ、さっき部屋に来たのは?」

「さっきも何も、誰も2階には行ってないですよ?」

1階は、平たく言うとワンフロアぶち抜き型で、玄関から一番奥のリビングの窓まで一直線で見渡せる。

もしもさっき来たのがパパだとしても、掃除中のお手伝いさんが見逃すはずもなく。

じゃあ誰さー!?
嫌ァァァーッ!!

って、二人して大絶叫。

お掃除もソコソコに、二人で夕方近くまで外出した。

晩御飯の時間、みんなが揃ったテーブルで今朝の事を話した。

途端、全員の顔色が変わった。
またか、とパパが呟いた。

実はこの家に越してきてから何度かそういう事があったという。

ただノックをして、起きてるかと聞いてくるだけだったから放置していたという。

そして、家族全員がその経験者で、ノッカーが来たとかってたまに話題にしていたらしい。

ここ数年はノッカーも現れなかったのですっかり忘れてたようだった。

去年からここで働き始めたお手伝いさんもそれは初耳だったようで、私と二人でガクブルしながらパパの話を聞いていた。

でも一つ気になって、聞いてみた。
ドアは開けようとしなかったのか、と。

ノッカーがドアを開けようとしたと私が話すと、みんなの表情が恐怖に歪んだ。

今まで、そんなアグレッシブな事はしてこなかったと。

「鍵、かけててよかったね・・・」

中学生の妹が呟いた。
全くだ。

それ一度きりで、ノッカーには出会わなかった。
でも帰国後、引っ越しをしたと手紙が来た。

妹がノッカーを見てしまい、これ以上この家には住めないと判断したという。

ノッカーが何だったのかは教えてもらえなかったし、知らない方がいいと言われたので言及もしていない。

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