生きた心地がしなかった

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

四年前、新しい家に引越したとき。
荷物を運び入れてどの部屋も一杯だったから、2階の一部屋に家族四人で寝た。

気持よくウトウトなり始めたとき・・・いきなりドアが開いてすぐにしまった。

「誰かが入ってきた!」

びっくりして起きてみると誰もいなかった。
親父、おふくろは隣の布団で、弟は二段ベッドのうえで寝息もたてずに寝ている。

俺は何となくドアの向こうに人が去っていく気配を感じたが、気のせいだと思って寝ようとした。
しかし、しばらくすると下の階から人の話し声が聞こえてきた。
一人ではなく、何人もの話声だ・・・。
泥棒の相談にしては話が長すぎるし・・・人数があまりに多い。

うちは一軒家なので、お隣さんはいない。

「誰だろう?」

気になったが、怖くなったので寝てしまうことにした。
しばらく眠れなかったが、30分ほど経ってようやくウトウトしはじめた。
すると今度はドアがゆっくりと開いた。
気のせいであって欲しいと・・・思いながら目を開けた。

ドアは確かに開け放されていた。
あの下の階から聞こえる人の声はもう聞こえなくなっていた。
音は何もなかったが、突然耳がキーンと鳴り出した。
ドアの向こうに目を恐る恐るやる。

暗闇が広がっていた。
何も見えない・・・。

だが確かになにかの気配を感じる・・・。
怖い・・・。

誰かを起こしたい。
体が固まってしまって自分の身体でないかのように全く動けない。

声を出そうとしたが、かすり声すらでない。
そうしているうちに暗闇の中にだんだんぼんやりと影が浮きあがってきた。
みるみるうちに影が人の形をなしていく。
心臓がバクバクなり、喉がからからになった。

それが部屋に入り込んできてこっちに近づいてきた。
そしてそれは俺の足元にまでやってきた。
俺は目をぎゅっとつむった。

するとそれはまるで本当の人間のようにギシギシはしごをのぼり上のベッドに横たわった。

弟は眠れなかったので下の階でテレビを見ていたらしい。

結局、幽霊とかの話じゃないけど、実際に体験すると心臓がバクバクで生きた心地がしなかった・・・。

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