記憶から消したい体験

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

まだ小学校の高学年ぐらいのころ、母子家庭の僕は札幌郊外のボロアパートに母、兄と3人で暮らしていました。

その日は確か中学生の兄の修学旅行の日、母と二人の晩のことでした。
そのボロアパートには洗面所がなく就寝前の歯磨きは居間の奥の2畳ほどのスペースの台所で行っていました。

当時僕の通っていた小学校では歯磨き習慣みたいなことを定期的に行っていた。
綺麗な歯の生徒には賞状と粗品のような物が配られていたんですね。
僕は結構その賞状を毎回もらっておりもちろんそれは日々の入念な歯磨きの成果だったわけです。

その日もいつも通り入念な歯磨きを長い時間かけて行っていました。
すると背後に人の気配がするんです・・・。
多分母親だろうと別に気にもとめず歯磨きを続けました。
振り返りもせずに・・・。

当時、僕の歯磨きに要する時間は15~20分と結構長かったと思います。
しかしその気配は消えることなく、長い時間ずっと僕の背後に存在していました。
振り返って見たわけではないのですが、あきらかに中年の女性の気配だと認識できたんです。
そしてその気配がどんどん近づいてくることもわかりました。

あきらかにその気配が僕のすぐ後ろに立っていることがわかりました。
それは呼吸すら感じる距離まで僕の背後に近づいていたんですから・・・。

それでも僕には恐怖心のような物はありませんでした。
その気配が母の物だと思っていたからです。(多分狭い台所でしたので歯磨きの順番待ちしてるのだろうぐらいに思っていました)

そしてようやく歯磨きを終えた僕はうがいを済ませ振り返り「終わったよ」と一言。
しかし、そこには母の姿はありませんでした・・・。

そしてその瞬間玄関でわずかな物音。
急いで玄関に行きましたがやはり誰もいなく玄関の鍵もしまっていました。

言いようの無い恐怖感が僕の中に広がり、急いで母が寝ている部屋へ・・・。
そこにはいつも通り布団に入り女性誌を読む母の姿がありました。

「ねぇ、僕が歯磨いてるとき後ろにいた?」

「いないわよ、ずっと本読んでた」

平然と答える母を見て恐怖が倍増。
すぐ背後に吐息まで感じた気配がなんだったのかは今でもわかりません・・・。

あれはドロボウか?または母のイタズラかとも思ったりもしますが、思い出すだけで怖いので・・・記憶から消したい体験です。

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