K先生が隠していた物

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

小学生だった時の話。
体育館の舞台の下手と上手とつなぐ地下通路があって、そのちょうど真ん中あたりに小部屋があった。
私は合唱クラブだった。
その小部屋をみんなで勝手に『楽屋』と呼んでこっそり持ち込んだ私物を隠したりする場所として活用していた。

夏休みの間に体育館を改築するという話があった。
その夏休み前の終業式の日、私は『楽屋』にヌイグルミを忘れていることに気付いた。
そのまま無視しようとも思ったが、瓦礫に潰されるヌイグルミを思うと不憫になって渋々学校に向かった。

用務員室に行くと「K先生が体育館にまだいるから入れるよ」と教えてくれたので、私はそのまま体育館へ向かった。

鍵は開いていたがK先生の姿は見えない。
『楽屋』は地下にあるからヌイグルミを取りに行っている間に鍵でもかけられたら大変とK先生を探した。
しかしどこを探してもいない。

体育館にはトイレがないのでトイレにでも行ったかな?と思い、私はなるべく急いで『楽屋』に向かった。
ダッシュすればヌイグルミを取って来るのに30秒も掛からない。

すると、取って帰ろうとすると何か通路が臭い・・・。
何だろうと思っていると地面にポッカリ穴が開いているのに気付いた。
散々使っていて気にもしなかったが、通路の真ん中、『楽屋』の近くにマンホールがあり、そこが開いていた。

中では人の気配がする。
工事の人かK先生か?・・・。

K先生ならヌイグルミを見られてしまう。
怒られるまではいかないだろうが、何かそこで手伝ってとか言われるのも面倒だから私は足音を忍ばせて遠ざかった。

と、後ろで物音がした。

すっかり舞台のソデに来てしまった私は恐る恐る顔だけ出して、通路を見た。
通路には一応蛍光灯がついていて薄暗くても視界はある。
やはりK先生だった。
穴から出てきてマンホールを一人で一生懸命動かしている。
穴を塞ごうとしている先生は方に大きなボストンバックを下げていた。

何を持っているんだろう・・・興味はあったが先生の様子がおかしい。
本当に必死というか、バックも重そうだし、マンホールの蓋も鉄で重そうだ。
誰か手伝いを呼んでもよさそうなものだが一生懸命やっている。

手伝ってあげようと思い一歩踏み出たその時。

「だれだ!!」

いきなりK先生が叫んだ。

K先生はボストンパックを地面に置こうとしているが重いうえに肩に斜めにかけているからモタモタしている。
きっとバックを置いて追っかけてくるのだと思った私は走って逃げた。

普段ならばあんなに叫んだり大声を出したりする先生ではなかったので怖かった。
きっと泥棒にでも間違えられたのかもと一応納得して、先生に悪いことをしたなと思いつつ帰宅した。

夏休み中もプールに行く為に学校に何度か通った。
日を追うごと体育館は壊されて、すっかり体育館がなくなった頃、プールに行くとパトカーが何台か、学校の駐車場にいるのを見た。
警察官が壊された体育館の跡地にいて、校長先生や用務員のおじさんと何かをやっていた。

しばらくして、またプールに行くと、体育館跡地に祭壇が組まれ、地鎮祭のようなことをした後みたいなものがあった。

休みが明けると、K先生が辞めていた。

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